ロシアがクルスク奪還に1万2000人の北朝鮮兵投入、対価は1人30万円
■ 5.北朝鮮兵は精鋭だが近代戦の戦術能力欠如 北朝鮮の場合は、戦うための装備品を持たないで訓練している写真が多い。一例として、北朝鮮中央通信が今年3月に空挺部隊の訓練として掲載したもの(写真3)を解説する。 写真3 北朝鮮落下傘部隊空挺降下後の訓練 写真1では、兵士が戦闘に必要な20キロほどの装備品を持って、実戦的な訓練をしている。 この装備品は、実戦の戦闘では最小限携帯する量である。 写真3の空挺兵は、落下傘降下後の戦闘訓練だが、銃以外は何も持っていない。 100発近い弾丸が入った弾倉、手榴弾、そして水筒でさえも携帯してはいない。北朝鮮の訓練で銃以外は何も持っていない写真は数多く見られる。 私は陸上自衛隊第1空挺団で小隊長だった頃、落下傘のほかに、約20キロの装備を携行して落下傘降下を行い、その後その装備品を携帯した戦闘行動(訓練)を行っていた。 落下傘降下しても、戦闘に必要な弾薬を含めた装備を持って行動することは当然のことだ。 どの兵種であっても、実際に戦闘する状態を想定して訓練を行うのが通常の軍隊である。現実に、戦うための訓練を行っているのだ。 ところが、北朝鮮軍はこれまで見せかけの訓練をやっている場合が多かった。 今回、精密誘導兵器が飛び交う戦場に投入されれば、対応できずに、砲弾の餌食になってしまうだろう。
■ 6.北朝鮮軍戦力の先遣隊 北朝鮮兵の派遣については、先遣隊と主力に分けられているようだ。先遣隊の動きは、次のとおりである。 どこの国の軍隊でも、軍部隊が投入される場合には、事前の情報収集とこれまで戦闘している部隊との調整が必要である。 それは、国内で戦っている同じ軍であっても実施する。今回の場合、ロシアの地で北朝鮮が投入されるのであれば、特に必要なことである。 北朝鮮兵の先遣隊派遣の情報がある。具体的には次の通りだ。 ウクライナ国防省情報総局長のキリーロ・ブダノフ氏によれば、10月初め、北朝鮮の最初のグループは2600人で構成されるとした。 韓国の国家情報院は10月18日、北朝鮮がロシア軍を支援するために派兵を決定し、約1500人がロシア極東で訓練していると発表している。 また、米国のカービー国家安全保障会議戦略広報調整官によれば、10月23日、少なくとも3000人の北朝鮮兵をロシア東部に移動させたという。 つまり、先遣隊は約3000人で、各旅団から派遣された3個大隊規模の部隊と考えられる。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、最初の部隊は10月27~28日に戦闘地域に配備される予定があるとの見方を示した。 10月27日の情報では、「クルスクに向かう高速道路で北朝鮮兵が乗車している民間のトラックが停車させられている」という無線通信が傍受されている。 NATO(北大西洋条約機構)のマルク・ルッテ事務総長は10月28日、北朝鮮兵がクルスクに展開していると伝えている。北朝鮮兵は、事前の計画通りにクルスクの戦場に到着していることになる。 戦闘に介入する場合、逐次介入と統一介入がある。 戦理としては、できるならば投入する部隊が各個に撃破されないために、全力での統一介入が望ましい。 だが、北朝鮮兵は、船と鉄道で移動すれば約8500キロも離れている見知らぬロシアで戦うのである。 クルスクで実際に戦闘している各旅団との調整もある。やはり、一部を必要な地域から、逐次投入という要領で作戦していくのが妥当である。