<わたしたちと音楽 Vol. 45>TOMOKO IDA 世界で活躍する女性プロデューサーが増える未来のために
日本とアメリカでは、音楽プロデューサーの役割も違う
――音楽プロデューサーとして、AI、三浦大知、SixTONES、EXILE TRIBEといった著名アーティストの楽曲プロデュースやファッション広告の音楽制作に携わっていらっしゃいます。音楽プロデューサーとはどんな仕事なのでしょうか。 IDA:音楽プロデューサーの定義も時代と共に移り変わっているのを感じますし、国によっても違いがあります。日本では秋元康さんや小室哲哉さんのように、コンセプトやメンバーを決めるところからプロデュースするスタイルが主流のようにみえますが、アメリカではトラックを作ればその人は音楽プロデューサーと呼ばれることが多いです。私の場合は、すでに活動しているアーティストからの制作依頼が多いので、プロデューサーとして、そのアーティストをより輝かせられる楽曲を提供しようと意識しています。 ――TOMOKO IDAさんが日本のアーティストに提供する楽曲はパワフルなものが多いと思いますが、日本とアメリカで求められる女性像に違いはあると思いますか。 IDA:それは国によって違いを感じますね。例えば、日本の男性はか弱い女性を素敵だと感じているのじゃないのかな。だから、そういった方向性の歌詞世界や楽曲が多かったのかもしれませんね。でもアメリカでは、パワフルな女性に支持が集まります。
全体の3%しかいない業界で先人として道を切り拓いていく
――TOMOKO IDAさん自身は日本人女性のプロデューサーとして、初めて【グラミー賞】ノミネート作品をプロデュースする偉業を達成されました。そのお立場から、「もっとこうなったら(女性がこの世界で)活躍しやすくなるのに」と思うことはありますか。 IDA:やっぱり先人が道を切り拓いていく必要があると思っています。例えば日本のヒップホップの世界の女性アーティストだと、今はAwichさんが前を走って頑張っている印象があります。そういう人がもっと増えていけばより世界が広がると思うので、私自身も、音楽プロデューサーとしてどんどん後進が出てくるように頑張っていきたいですね。現在住んでいるLAのプロデューサー、ソングライターのコミュニティーでは、ほかのアジア人に比べて日本人はとても少ないので、みんなどんどん世界に出てほしいです。 ――MPCでのパフォーマンスもプロデューサーという仕事も、求められるスキルは身体的な影響を受けることの少ないジャンルかと思うのですが、どうして女性が少ないのでしょうか。 IDA:現状でも、女性のプロデューサーは全体の3%以下だと言われています。やはりマシンやPCを使うので、メカニックで理系のイメージがあるのではないでしょうか。女性だからやりづらいことは全くないと思うのですが、圧倒的に数が少ないので、現場で驚かれますね。アジア人の女性は若く見られるので、「こんなにスキルがあるなんて」と良い意味でのギャップを与えているようです。