銀行経営の足かせ“ドッド・フランク法”廃止でウォール街の憂鬱はなくなる?
ドット=フランク法に反対するのは共和党とウォール街
これに対して、規制される側のウォール街(米国金融業界、とくに大手金融機関のことを指す)からは強い反発が向けられてきた。彼らの主張は、規制が厳しすぎ、対応コストも非常に重く、経営を圧迫するというものである。 共和党内もまた、この法律には反対の意見が強い。第一に、“大きすぎてつぶせない”巨大金融機関の救済に公的資金が使われる余地が残されている。第二に、FSOC、CFPBなど政府機関の肥大化を招いている。第三に、過度な規制強化を受けて金融機関の貸出が低迷し、景気に悪影響がある、という点だ。 実際に、ドッド・フランク法の成立以降、米国金融機関の収益性は低迷し、「規制にがんじがらめにされた低成長産業」とみなされるようになっているのである。 以上述べてきたように、この法律をめぐる対立の構図は、もともと民主党vs共和党+ウォール街というものなのである。つまり、ドッド=フランク法の廃止はトランプ次期大統領が独自に持ち出したものではなく、もともとあった共和党内の意見をくみ上げたものといえる。たとえば、共和党員として知られるアラン・グリーンスパン元米連邦準備理事会(FRB)議長もまた、ドッド・フランク法の廃止を強く主張している。 いずれにしても、業績の足かせとなっているドッド・フランク法が廃止、もしくは全面的に見直しされれば、金融業界にとって大きなプラスになることは間違いない。 また、ブレグジット(英国のEU離脱)により、国際金融都市としてのニューヨークの重要性がさらに高まるとの見方もある。トランプ・ショックで(減税やインフラ投資で大規模な財政支出が行われるとの予想から)長期金利が上昇していることも銀行にとってはプラス要因だ。これらが、米国金融株の急上昇の要因となっているのである。 ドッド・フランク法は米国の法律だが、米国で業務を展開する日本のメガバンクなどもこの規制の対象となっており、規制の撤廃もしくは緩和から大きなメリットを受けることになる。