銀行経営の足かせ“ドッド・フランク法”廃止でウォール街の憂鬱はなくなる?
リーマン・ショック前には戻れない?
共和党は、大統領のポストに加えて、議会上下両院をおさえている。公約となっているドッド・フランク法の見直しが進められること自体は間違いないだろう。ただし、ドッド・フランク法がリーマン・ショックの教訓から生まれた法律であることを考えると、それを全廃してリーマン・ショック前の状態に戻すことは世論から受け入れられないのではないか。 トランプ政権移行チームは「新たな政策に置き換える」と言明しているが、内容の簡素化や行政組織の縮小が進められる一方で、銀行のリスクテイクを制限するボルカー・ルールなど規制のいくつかは、形を変えても残る可能性が高いと考えられる。加えて、1990年代に撤廃された銀行業務と証券業務の分離規制(グラス・スティーガル法)が復活する可能性もある。つまり、ウォール街が望んでいる全面的な規制緩和という方向に議論が進んでいくことは、必ずしも保証されていないのである。 もっとも、すでに触れたが、トランプ・ショックにより米国長期金利が急上昇し、日本の長期金利もその影響を受けてプラス圏に浮上している。長期金利は銀行の利ザヤの水準を左右する重要な指標であり、長期金利の今後の動向のほうが金融株の行方には影響が大きいのではないだろうか。 (解説:ミリタス・フィナンシャル・コンサルティング代表取締役・田渕直也)