ドイツが難民受け入れから「不法移民への強硬策」へと舵を切った深刻事情...テロ続発で高まる懸念、右派躍進に募る危機感
■東独2州で右派政党が躍進 テロに対する不安感や、出入国管理政策への批判が高まる中、2024年9月1日、旧東ドイツのテューリンゲン、ザクセン2州の州議会選挙が行われた。どちらの選挙でも、右派ポピュリズム政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が躍進した。 AfDは、流入者の強力な削減、国境に物理的障壁を設置、難民の家族呼び寄せ拒否、送還促進など、出入国管理の厳格化を掲げてきた。AfDは、テューリンゲン州では32.8%(前回2019年の得票率から9.4ポイント増)の得票率で第1党、ザクセン州でも30.6%(同3.1ポイント増)で第2党となった。
テューリンゲン州の有権者を対象とした、ARDが報じた世論調査では、「何に懸念を抱くか」という質問に対して、「犯罪が将来大きく増える」が前回調査に比較して17ポイント増の81%、「ウクライナ戦争に引き込まれる」77%、「イスラムの影響力がドイツで強くなりすぎる」が21ポイント増の75%、「多すぎる外国人がドイツにやってくる」68%となっている。 ウクライナ戦争は影を落としているものの、経済や気候変動問題よりも、移民・難民問題が有権者の懸念の上位を占めている。
戦後ドイツ政治を担ってきた既成政党や知識人にとって、右派政党は存在を許すことができない政治勢力だった。しかし、AfDが継続的な支持を得ていることは否定しようがなくなっている。 ARDは世論調査に基づき、AfDは2013年の発足当初、既成政党に飽き足らない有権者が支持する「抵抗政党」だったが、今では具体的な問題解決への期待から支持する「課題解決政党」に変化した、との分析を報じた。 既成政党はAfDの強硬な移民・難民政策を取り込まなければ、その勢力拡張を押しとどめることはできない。
■段階的に厳格化してきた現ショルツ政権 ドイツは1950年代からガストアルバイターと呼ばれる移民労働者を1000万人以上受け入れ、冷戦崩壊後の混乱から東欧諸国や旧ソ連から100万人以上、2015年の難民危機でも100万人以上の難民が流入した。 すでに人口の4人に1人が移民系となっており、さらに2023年には「第3波」ともいえる35万人の難民流入があり、主に収容施設に責任を持つ地方自治体から受け入れは限界との声が上がっていた。