秋冬スーツをスタイリッシュに着こなすヒント──テーラリングのエキスパートに訊く
心地のよいフランネルからしっかりとしたツイードまで。今季、5名の有名テーラーを夢中にしているスタイルをご紹介。 【写真10枚】5名のテーラーが魅せる秋冬スーツ着こなしのヒント
秋から冬にかけての、やや涼しい日々と本格的な寒さの間の時期は、あらゆるメンズウェアのゴールデンタイムだ。バターのように柔らかなスエードジャケットや心地のよいフランネルシャツ、風合いが楽しいコーデュロイやチェルシーブーツなどの出番だ。 しかし、レイヤリングのピークシーズンの到来に興奮するあまり忘れてしまいがちなのは、秋がスーツにとっても素晴らしい季節であるということだ。夏の終わりの爽やかなシアサッカーやリネンから、ウーステッドウール、コットンフランネル、ツイードのようなより厚手の、しかし通気性のあるファブリックが主流となる。 秋冬シーズンに着たいベストなスーツを探るべく、テーラリングのエキスパートたちに意見を募った。 ■マックス・パピエ──アーモリー NYC ディレクター・オブ・E-コマース デッドストックのウーステッドウール生地を用いた、プリンス・オブ・ウェールズ・チェック柄のダブルブレストスーツ 「普段はスポーツコートを羽織ることが多く、季節を通して様々なウェイトのニットをその下に着用しています。だから、スーツとネクタイにするときは、自分が持っているなかでもユニークなものに手が伸びますね」と、パピエは言う。 今季、彼はフォーマルな場ではフィレンツェの名テーラー、リヴェラーノ&リヴェラーノによるダブルブレストのスーツを着用してきた。「生地は、私がミラノの古いテーラーで見つけた最高級のウーステッドウールです。おそらく40年か50年前のものでしょう。その時代のウールはより丈夫で、現在のこのスタイルの多くに見られる真っ白ではなく、クリーム色と黒のチェックに惹かれました」 ■ラルフ・フィッツジェラルド──フィッツジェラルド ビスポーク ネイビーのコットンフランネルを用いたダブルブレストスーツ、カシミアのブークレ素材を用いたダブルブレストのオーバーコート 「たいていフランネルを出し始めるのはこの季節です。表面に起毛のある生地は熱を蓄え、温かくしてくれます」と、フィッツジェラルドは言う。彼は、サヴィルロウで修行を積み、ニューヨークのクライスラー・ビルにアトリエを構えるテーラーだ。 フランネルは伝統的にウールから作られているが、フィッツジェラルドは今シーズン、ブラシを施したコットンフランネルを好んでいる。「驚くほどソフトかつ丈夫で、コットンの伸縮性が着心地をよくしてくれます」と彼は話し、テクスチャーのあるネイビーのコットンから仕立てられた、6×2のダブルブレストジャケットを見せてくれた。「最高に着回しやすく、セパレーツとしてもシンプルに着ることができます」 コットンフランネルのスーツに加え、フィッツジェラルドはダブルフェイスのカシミアブークレから仕立てられた、ダブルブレストのオーバーコートを愛用している。「テディ風のコートとして、冬には最適です」と、彼は話した。 ■バズ・タン──アンソロジー共同創業者 トープブラウンのメリノウールを用いたダブルブレストスーツ 「万能な無地が昔から好きなのですが、退屈な印象にならないような要素を取り入れるよう注意しています」と、タンは言う。彼は、現在お気に入りのダブルブレストスーツのトープブラウンに、テクスチャーと重厚感の幸福な一致点を見出した。彼はこれを、アンソロジーのコットン製クルーネックセーターの上にボタンをかけずに合わせている。 「テーラリングの話題では、強撚糸のウールフレスコや番手の高さなど、トラベルスーツ用の生地がよく取り上げられますが、糸が細ければ細いほど使いやすさや耐久性に欠点が出てきます」と、彼は言う。「このオーストラリア産のメリノウールは完璧なバランスです。ソフトでしなやかでありながら、適度なドレープ感もあります。これらは通常、同じ服には見られない特徴です」 ■シド・マッシュバーン──シド マッシュバーン創業者 メドウ・カントリー・クロス「ゴースト」ジャケット、サイドタブ・ドレス・トラウザーズ 仕事でアトランタとニューヨークを定期的に行き来するマッシュバーンは今季、自身のブランドのメドウ・カントリー・クロスを使った新作「ゴースト」ジャケットと、お揃いのサイドタブ・トラウザーズを愛用している。 「カントリー・クロスはとても重厚な英国の生地ですから、着始めることができるのは外気温が21度を下回ってからです」と、彼は言う。ウェスト・ヨークシャーにある家族経営の工場から仕入れたこの生地は、ツイードのような丈夫さと通気性のよい粗めの織りが特徴だ。そのヘザーグリーンの色味は、マッシュバーン曰く英国の生垣を思わせるという。 「『ゴースト』は、オールインワンのジャケットを目指したものです」。裏地がなく、かっちりとした構造を持たない仕立てについて、マッシュバーンはそう説明する。ポケットのフラップは、出してもインしてもよいコンバーチブルなものだ。「ほとんど着ていないも同然の着心地です。生地はかなり厚手なので、形を保つためのキャンバスや芯地は必要ありません」 ■ジェイク・ミューザー──J・ミューザー創業者兼クリエイティブ・ディレクター 三つ杢の平織りスーツ 「今の個人的なお気に入りは、私たちが作った三つ杢平織りです。しっかりとしたウールのような重さがありながら、もっと軽い生地のような通気性があり、非常にシワになりにくいものです」と、彼は言う。 ミューザーは最近このスーツを着てロサンゼルスを訪れたが、南カリフォルニアの日中の暖かさと夜の涼しさに最適であることがわかった。また、ニューヨークの秋にも相応しく、スコットランドへの旅行にも活躍した。「それだけでなく、この生地は非常に丈夫で、旅行には最適だし、服をあまり丁寧に扱わない私にはぴったりです」 From GQ.COM By Jeremy Freed Translated and Adapted by Yuzuru Todayama