40代おばさんがドリカムライブに参戦。かつての女子高生たちが代々木体育館に集合。同年代、先輩、後輩という客層は、まるで同窓会!
世間から「大丈夫?」と思われがちな生涯独身、フリーランス、40代の小林久乃さんが綴る“雑”で“脱力”系のゆるーいエッセイ。「人生、少しでもサボりたい」と常々考える小林さんの体験談の数々は、読んでいるうちに心も気持ちも軽くなるかもしれません。第36回は「ドリカムはおばさんの青春」です。 【写真] あの曲も!代々木体育館の1枚 * * * * * * * ◆青春にはいつもドリカム 先日、代々木体育館で行われたドリカムのライブ『DREAMS COME TRUE 35th Anniversary ウラワン 2024/2025 supported』が運良く当選して、1人で出かけてきた。 ドリカムと出会ったのはいつだろうと思い返すと、確か中高生の頃。ど田舎の学校でも音楽に敏感な同級生がいて、 「ヤバいバンドがいる」 そうアルバムをクラスに持ってきて、皆で聴いたことを思い出す。伸びやかな声に、耳に溶け込むようなサウンド。何よりも私たちの心の声を言語化して、歌で代弁してくれているような歌詞。女子生徒たちは一気に夢中になった。娯楽の少なかった時代だ。私たちはヒット曲に触発されて、当時はCDを買い、カラオケで歌い、泣いた。 ドリカムの『未来予想図2』を真似て、彼氏に「角を曲がるときにブレーキランプを5回踏んでくれ」とせがんだ。その恋が終われば友人に『サンキュ.』を歌ってくれと頼み、案の定泣いた。『あなたにサラダ』を聞いて歌いながら、大量のサラダを作って、母親に怒られた。他にもネタは尽きないけれど、とにかくドリカムはいつも自分の味方でいてくれる音楽の聖母マリアだった。 あれから35年が経過した。彼らのライブには何度か出かけているが、今回がコロナ禍前の2019年以来、5年ぶりの参戦だ。
◆中高年率高めの場内に安堵 場内に足を踏み入れて驚いたのは、客層に中高年女性が多かったこと。5年前に『さいたまスーパーアリーナ』で行われたライブの時は気にならなかったけれど、今回はどうも自分より先輩の50代、60代と見受けられる人が多い。 「(……松田聖子ちゃんのライブみたいだな)」 そう思いながら1階席に着席。四方八方、おばさんに囲まれる、おばさん(自分のこと)。なんて居心地がいいんだろう。ライブというと若手の領域という苦手意識が湧いてしまい、ここのところフェスもご無沙汰。多分、そう思う中高年も多いだろう。ところがこの会場は同年代と先輩と時折、後輩という客層。中には子どもを連れている人もいた。 そうだ。ここにいる人たちは皆、同士。ドリカムの歌に心潤された女子高生たちが、ちょっと成長して、同窓会に集まっているようなもの。今日は憧れの先輩=ドリカムの曲に酔いしれるのだ。自分の年齢は自宅に置いてきて、思い切り歌うのだ。 そんなことを考えているうちに、客電が落ちてライブスタート。 KEITA MARUYAMAの衣装に身を包み、2人が登場した。セットリストなど詳細はネタバレになるので、割愛する。これは会場に行く、成長した女子高生たちのお楽しみだ。 ちなみに参加した私……と申しますと。ボーカルの吉田美和さんの登場だけで涙腺が緩み、一曲目が終わる頃には涙が止まらなくなっていた。こうなるだろうと予測して、アイメイクをしてこなくて良かった。そんな私を見て、隣席の客が「え? もう? 泣いている??」と驚いていたけれど、感情は止められない。 その隣席客も含めて、客席が総立ちにならないところもいいなあと思った。アリーナ席と1階席の一部は立っていたけれど、私の席から見える範囲では2階席は90%以上が座っていた。そんな様子もステージに立つ演者たちが「もうお互い年だもんね」といわずもがな、認めているように見えた。 昔、某アイドルのライブに出かけた際、会場の東京ドームは全員総立ち。MCに入り、メンバーから「お話をするので、座ってください」と指示があると、後ろの席の50代と思しき女性たちの会話が聞こえた。 「良かった~、立ちっぱなしだと辛いよね」 「ねえ、膝がね」 当時、30代後半で元気に満ち溢れていた私は「……膝?」と、会話に疑問を覚えた。あれから時は過ぎ、今なら膝の辛さを訴えていた女性たちの気持ちが分かる。無理せず、立ったり、座ったり、自分のペースでいきましょうよ。日本を代表するアーティストが(おそらく)認めてくれているんだから。