EV、リチウムイオン電池、太陽光パネル…「過剰生産問題」を非難する先進国に中国が“開き直り”を決め込む「4つの理由」
出る杭は打たれる
かつて孔子は、「過猶不及」(グオヨウブージー)と宣(のたも)うた。これを日本人は、「過ぎたるは猶(なお)及ばざるが如(ごと)し」と訳した。 【写真】習近平の「経済無策」と「国民監視」で、いよいよ「日本叩き」の動きが…! しかし現在、中国は、この孔子様の教えに反したことをやっていると、欧米から叩かれている。すなわち、EV(電気自動車)、リチウムイオン電池、太陽光パネルなどの「過剰生産問題」だ。 5月14日、米ホワイトハウスは、長文のファクトシートを発表した。タイトルは、「バイデン大統領は、中国の不公正な貿易慣行からアメリカの労働者とビジネスを守るための行動を取る」。冒頭でその目的を、力強く謳っている。 〈 バイデン大統領の経済計画は、アメリカ経済の将来と国家安全保障にとって不可欠な主要分野への投資を支援し、良好な雇用を創出することを目的としている。技術移転、知的財産、イノベーションに関する中国の不公正な貿易慣行は、アメリカの企業と労働者を脅かしている。中国はまた、人為的に低価格の輸出品を世界市場に氾濫させている。 中国の不公正な貿易慣行に対抗し、その結果生じる被害に対抗するため、バイデン大統領は本日、アメリカの労働者と企業を保護する目的で、1974年の通商法第301条に基づき、中国からの輸入品180億ドルに対する関税を引き上げるよう通商代表に指示した。(以下略)〉 ここで興味深いのは、アメリカが単純なビジネスとしてではなく、「国家安全保障」として、中国の過剰生産問題を捉えていることだ。そのことは後述する。 ファクトシートには、後半部分に具体的な品目と関税率が明記してあった。それらは以下の通りだ。その後、5月22日にUSTR(米通商代表部)が、2024年分は8月1日から実施すると発表した。 ---------- 鉄鋼とアルミニウム: 0%~7.5% → 25%、8月1日~ 半導体: 25% → 50%、2025年~ EV: 25% → 100%、8月1日~ EV用リチウムイオン電池: 7.5% → 25%、8月1日~ 太陽光パネル: 25% → 50%、8月1日~ 船舶用クレーン: 0% → 25%、8月1日~ 医療製品: 0% → 50%、8月1日~(一部は2026年~) ---------- 中国が、コロナ禍からの経済回復の「3種の神器」のように扱っている「EV・リチウムイオン電池・太陽光パネル」を、標的にしている。特に、躍進著しい中国のEVには、最高税率の100%の税率をかけるとしている。 中国では3月6日、国会に相当する全国人民代表大会の最中に行われた経済5部長(大臣)級の合同記者会見で、鄭柵潔(てい・さくけつ)国家発展改革委員会主任が、自国の経済回復ぶりを、こう誇った。 「昨年の中国のNEV(EVなどの新エネルギー車)の販売台数は950万台に達し、前年比35%以上だ。リチウム電池の生産量は25%伸び、太陽光電池の生産量は54%伸びた。これら『新三種』の輸出は30%近く伸びた。そのうちNEVの輸出は120万台を超え、前年比77.6%増。輸出量は安定して世界トップだ」 このように、「新三種」の輸出躍進を、自画自賛しているのだ。だが、「樹大招風」(シューダージャオフェン 出る杭は打たれる)というものだろう。