阪神が犯した4つのミス…このままでは来季も巨人に勝てない?
しかし、秋山を早期降板させた1イニングが響く。矢野監督は、はなから藤浪に回跨ぎをさせるつもりで、打順の遠い7番に入れていたが、次の7回につかまる。一死から炭谷、若林に連打を浴び、一、三塁から吉川尚に真ん中に抜けたフォークを左中間に運ばれたのだ。ここで記録に残らないミスが生まれる。二塁のカバーに入る選手が誰もいないベースの空いた状況を作り、打者走者の吉川尚に二塁を許してしまったのだ。本来は、ショートの小幡がカバーに入らねばならないが、北條、小幡、ボーアの3人が外野からの中継に入ってしまっていた。初歩的な連携ミスである。二、三塁となって松原に2点タイムリー。防げる失点だった。 阪神OBの評論家の池田親興さんは、藤浪の起用に疑問を呈した。 「今は藤浪に自信をつけさせてやることが重要な時期。新型コロナの影響で選手がいない中、苦肉の策でセットアッパーを任された藤浪は、まさに怪我の功名で、いいボール、いい藤浪に戻りつつあった。先発では、加減していた腕の振りもマックスで、しかも制球ができていた。多少制球が甘くても球威でねじこめるボールで、表情も生き生きして自信を取り戻しつつあるように感じていたが、こういう使い方をしてしまえば、元の木阿弥である。6回を連続三振で切り抜けたところで、いいイメージを持った状態のまま交代させるべき。藤浪に対しては、丁寧に起用することが大事になってくる。ブルペンで準備の時間が必要な投手でもあるからなおさらだ」 そして阪神が犯した4つ目のミスが、不調のドン底にあるサンズ、ボーアへの無策である。
サンズは初回、5回と、2度の得点機に捕邪飛と三振。ボーアも、初回二死満塁で一ゴロ、三回一死満塁に三振を喫していた。 内角を意識させられる配球に苦しむサンズは6試合ヒットがない。常に立ち遅れ、まったくタイミングの合っていないボーアは、4試合ヒットがなく、ここ8試合で1本しかヒットを打っていない。開幕前にはサンズを2軍に落とし、開幕7戦目でボーアをスタメンから外していた矢野監督だが、現在の危機的状況では判を押したかのように4番サンズ、6番ボーアの打順を動かさない。 消化試合に突入した中で、大山の本塁打争いが、唯一のファンの楽しみであるが、不振の2人に挟まれては、3四球も仕方がないだろう。勝負をしてもらえないのだから、このままでは、タイトルの可能性もしぼんでしまうことになる。 西武、巨人、楽天で作戦コーチなどを務めた評論家の橋上秀樹氏は、「阪神と巨人に戦力差はそこまでないと思う。両チームが違うのは、1球、1打への執着心であり、それを統率し作り出す監督力の差だろう」と分析していたが、この日も、ひとつ違えばのクロスゲームが、13残塁を重ねて終わってみれば1-7のワンサイドゲームである。 阪神の本社、フロントは、Aクラスに満足するのではなく、この巨人との13.5差の理由をあらゆる角度から検証して、来季の巻き返しへの手を打たねば、2021年も同じ失敗を繰り返すことになる。