ロータス「エキシージS」にオートマ仕様が出た理由
「ロータスはレーシングカーを無理やり街乗り仕様に仕立てた様なクルマだ」と言うのは英国人である。彼らの常識としてスポーツカーはMGとトライアンフであって「ロータスは違うもの」らしい。 我々から見ると、少なくともロータス・エランはスポーツカーのメートル原器のようなもので、エラン以前にもエラン以降にもあれほどの理想的なスポーツカーは無いように見える。しかしそれでも英国人にとってロータスは違うものなのだ。 彼らは別にロータスを低く見ているわけではないが、あまりにもスパルタン過ぎるクルマであり、彼らの定義に基づく「スポーツカー」に入らない。「あれは週末にサーキットに行く人とか、変人の乗りものだから」と言うのが彼らの主張である。
その源流はロータス・エリーゼ
エキシージは、そのエンジニアリング的源流をロータス・エリーゼに持っている。エリーゼは1995年にデビューしたが、当時日本のインポーター事情が錯綜しており、1999年まで正規輸入されなかった。日本人の一部マニアはロータスを小型軽量でピュアなスポーツカーとして偏愛していたから、エリーゼを求める人は多く、数多くの車両が並行で輸入されきた。 何しろ初期型エリーゼの車両重量は690キロと、非常識に軽かったのである。当時ピュアスポーツとして同様に人気が高かったスーパーセブンはカタログ発表値はともかく実際の重量は750キロ近かったことからも、エリーゼがいかに際立って軽かったかがよくわかるだろう。 エリーゼは当時としては極めて先進的なシャシー構造を持っており、アルミの型押し材をエポキシ樹脂で接着することによって主構造材が形成され、外皮にはFRPが用いられた。エンジンはいわゆるミッドシップに搭載されていたが、FF用ユニットの流用なので、搭載位置は車両中心には程遠く、ほぼリアホイールの上である。 理想とは程遠い配置だが、そのエンジンがローバーのKユニットと呼ばれる単体重量たった90キロの超軽量ユニットであったため、リアヘビーが引き起こす様々な問題に悩まされずに済んだ。もちろんロータスのお家芸であるサスペンション・セッティングの巧みも功を奏しているのは間違いない。