ロータス「エキシージS」にオートマ仕様が出た理由
サーキット専用車として生まれたエキシージ
エキシージはこのエランを母体として、レース用に仕立てた「モータースポーツ・エリーゼ」の系譜に属する。基本的なエンジニアリングは、ノーマルのエリーゼより強力なエンジンを搭載し、トレッドを広く取ることで成立している。エンジンが大きくなったため、ホイールベースも延伸された。 横置きエンジンのミッドシップでホイールベースを延伸するということはとりもなおさずリアヘビーがより悪化することになるのだが、それをトレッド拡大による基礎特性の改善と、サスペンション能力の向上で補っている。トレッドの拡大に際して、サスペンションアームが新設計され、より剛性が高められている。 手法としてはまさにレーシングカー。理想の追及よりも現実に速くすることに主眼を置いたチューニングである。そういう意味で言えば、現行ロータスラインナップでもっとも「英国人の思うロータス」に近いのがエキシージSだと言えるだろう。 V型6気筒スーパーチャージャー付きの3.5リットルユニットは、7000回転で350馬力、40.79kgmのトルクを発生する。エンジンは200キロ近いはずだから流石に重量は重い。デビュー当時690キロだった車両重量はいまや1190キロにまで肥大した。 エンジンが大きく重くパワフルになり、それを受け止めるトランスミッションも強化され、サスペンションが強化され、ボディサイズが大きくなる。さらにツインエアバックやオーディオ、エアコンまで標準で着くようになれば重くなるのは当然だ。 日本のロータスファンはゼロ戦のようにひらひらと旋回する軽量ピュアスポーツをロータスに望み、英国人はレーシングカーみたいなクルマとロータスを捉えるのだが、不思議なことにロータスの中の人たちは、いつもロータスをゴージャスなスポーツカーに仕立てたがる。それは創始者であるコリン・チャプマンが存命中から変わらない。実はメートル原器であるエランの次に現れたエラン+2は、すでにそうしたGT的な装備を施されていた。ロータスのパブリックイメージと会社自身が目指すものはずっとバラバラなままなのだ。 「だからロータスは売れないんだよ」という結果が出ていれば簡単なのだが、実はそうは問屋が卸さない。ロータスは今、売り上げ好調だ。EUトータルでの売上は81%向上、特にフランスでは143%の向上だという。この他米国で30%、カナダで50%、中国で130%、日本でも125%向上している。