ロータス「エキシージS」にオートマ仕様が出た理由
ポルシェ・ボクスターを意識?
2012年には社長の解任劇だの資金の不正流用だのというスキャンダルが飛び交い、それに続く泥沼の訴訟合戦でドタバタ続きだったロータスは、一時期車両の生産もままならないというニュースが聞こえてきていたのだが、それを脱した様子だ。 もっとも、古くからのファンにとっては、もうそうした泥沼があってこそのロータスという発言が聞こえてくるほどだが、いずれにせよセールスの好調は喜ばしいことだ。個性的なクルマを作り、多くのファンを持つメーカーがそんな本業と関係の無いところで倒産するようなことになったら目も当てられない。 さて、そんなロータスから新たなリリースが届いた。なんとレーシングカーそのものと言ってもいいエキシージSにオートマチックトランスミッションを採用したというのだ。 問題のオートマは6段のパドル付きで、自動モードを備え、変速を0.24秒で行うという。さらに驚くべきデータが並ぶ。0-100km/hの加速はマニュアルミッションより0.1秒速く、ロータスのテストコースであるヘセルの周回アタックでもマニュアルのタイムを上回ったのだと言う。 確かにクルマを操る本質はギアチェンジにあるわけではない。別に速くて変な癖がないのならオートマチックだってかまわないようなものだが、ロータスファンがそれをどうとらえるかはまだ分からない。 しかし、今回のオートマ導入の理由を考えてみると、どうもそこにポルシェ・ボクスターの影が見える。世界中のスポーツカーメーカーが羨むビジネスモデルをポルシェは完成させている。1000万円級の高価なクルマを沢山売る。高価なクルマを売るメーカーは多いし、安価なスポーツカーを沢山売るメーカーもかつては少なくなかった。しかし世界の自動車史において、高価なスポーツカーを沢山売ることに成功したのはポルシェだけである。
ロータスのラインナップを眺めると、エボーラとエキシージはポルシェのボクスターと競合するのがよくわかる。いざ走らせた時、ボクスターと戦えるのはエキシージの方である。しかしながらボクスターで選べるオートマチックがエキシージには無いのだ。「ポルシェのようになるために必要なものはオートマチックトランスミッションである」。ロータスはそう考えたように思える。これが計画通り売上向上につながるなら、ロータス史上初めて、宿願の豪華路線での成功となるかもしれない。売上が急増中の今、ロータスの決断をマーケットがどう受け止めるのか慎重に見極めていきたい。 (池田直渡・モータージャーナル)