いま路線バスのサバイバルが始まっている! 電動バス・小型バス・二階建てバスで細かなニーズに対応することが鍵か
路線バスよりも狭い範囲のカバーが求められる
そんななか、2024年10月18日に都内でバス関係業者向けに開催された「バステクin首都圏2024」の会場で注目されたのが、西鉄車体技術が出品した小型電動モビリティバスの試作車である。日野のデュトロ Z EV ウォークスルーバンをベースとした乗車定員11(座席8+立ち席2+運転士1)名のBEVとなるマイクロバスである。 過疎地域だけではなく、都市部でも「オンデマンドバス」というものが広く運行されるようになった。予約して乗車することを基本とし、一般的な路線バスが運行しているときはそのルートを迂回する、予約に応じて走行ルートの変更可、自宅から病院まで乗るといった利用など、その形態はさまざまとなっている。 特徴としては、運航制限のある「コミュニティバス」よりもさらに小まわりを効かせて運行することができることだ。オンデマンドバスは現状ではトヨタ・ハイエースのマイクロバス仕様となる「コミューター」などが使われることが多い。 新しい考え方としては、オンデマンド運行には変わりないのだが、従来の路線バスの最寄りバス停までの「ラストワンマイル」の移動手段としての普及も想定しているそうだ。少子高齢化で、自宅最寄りバス停へ歩いて向かうのも困難な住民が増えている。バス利用促進を図るためにも、小型バスの積極的な運行というものが注目されているのだ。 「バステクin首都圏」では西鉄車体以外にも、EVモーターズジャパンが全長5.38(定員10人)mと5.99m(定員11人)のBEV小型バスを出品していた。居住専用地域を走ることにもなるので、ICE(内燃機関)車では騒音や排気ガスというものが問題となることもあるが、BEVなら騒音も排気ガスも問題解決できるので、BEV前提でコミュニティバスサイズと同じく「超小型」とも呼ばれる乗車定員10名程度のバスも今後は需要が高まるものとして注目されている。 また、ポイントとしては、10人乗りというのが肝。なぜなら、乗車定員10人以下ならば普通二種免許があれば運転可能なので、中型や大型二種免許所有者に限定されるよりは働き手が集まりやすいのではないかとも考えられているからだ。中長期的に見れば、「自動運転化」が視野に入っているのも間違いないだろう。 つまり、大型車両の一般路線バスでの運行路線は今後、限定的となってくると考えられる。人口減少社会に歯止めがかからない現状が続けば、結果的に利用者減に歯止めがかからないからだ。ただし、限定的とはいえ、大量輸送力が要求される「ドル箱路線」みたいなものも完全消滅ということはないだろう。そのなか、利用者減のなかで効率的な運行をすることで、生活移動手段の確保というものを図るためにオンデマンドバスだけではなく、よりきめ細かなフォロー(最寄りバス停までの移動手段など)を目的とした超小型バスの運行も広がりを見せている。 少子高齢化が進み、若年層の運転免許保有者が地方部でも減少傾向にあるなかでは、路線バスはまだまだその需要では将来性があるともいわれるが、それはいままでのようなバス運行だけではフォローすることはできず、多様化する社会に対応した新たな運行形態の模索が、今後は大切とされている。 車両の電動化だけでも四苦八苦しているなか、新しい試みにも積極的に挑まなければならないのだが、いまのバス事業者は「懐具合」が悪いだけではなく、「働き手不足」も深刻化してきており、そこの改善も急務となっている。身近な公共交通機関である路線バスが生き残るかどうか、まさにいま正念場を迎えているのである。
小林敦志