イチロー決断の理由。日本復帰の選択肢もあった?
マイアミ・マーリンズと1年、200万ドル(約2億4000万円)で契約を結んだイチロー外野手(41)が29日、都内のホテルで入団記者会見を開いた。マイアミからデービッド・サイモン球団社長、マイケル・ヒル、ベースボールオペレーション部の代表、ダン・ジェニングスGM他、医療スタッフまでが、空路18時間もかけて駆けつけてきた超異例のVIP会見。イチローも「ただただ恐縮。(日本での入団会見は)通常ありえないことと認識しています」と驚くほどの熱意で、日本人レジェンドメジャーリーガーを口説き落とした。日本復帰の選択肢があったことも否定しなかったイチローは、なぜマーリンズを選んだのか。
黒いスーツに身を包んだイチローは、100人以上の報道陣で満員となった宴会場を静かに見渡した。2000年、マリナーズ移籍が決まり初めて海を渡った際、以来となる日本での入団記者会見。マイアミから大挙して球団幹部が来日してMLBジャパンやNPBと連携して記者会見を開いたことは、これ以上ないリスペクト表現であった。 「熱いです。絶対こないでしょう、マイアミからですよ、ありえない。ビックリしました」 当初、身体検査などの正式契約に向けて必要な手続きも「西海岸のシアトルで一日でやってまた翌日に日本へ戻ろう」とイチローが考えていたが、そのすべてが日本で行われた。 「合意ということになって駄目元で(身体検査や会見を)日本でできないかという提案はした。すると、合意となった瞬間に日本でやりましょうとなって、事が今日に至る、という急展開でした。気持ちで来るというのは、こういうこと。段取りは後だ。その先走り方が好きでしたね」 マーリンズにとって、それほどイチローの存在は大きかった。 オペレーション部門の最高責任者であるマイケル・ヒルは、「マーリンズにとって、今日は、歴史的な一日になる。マーリンズ初の日本人選手としてイチローの故郷での入団発表が重要だと考えた。昨年のオフに今年にわたって、プレイオフ進出、優勝のためにどうすればいいかを考えて、必要な選手を集め始めたとき、イチローのような実力のある選手を獲得できるとは思っていなかった。オーナーが、フロリダに優勝を持ち帰りたいと強く願い、そのためには、いかに選手層を厚くするのかが重要だった」と説明する。 マーリンズは今オフ、優勝を狙うため、トレードやFAでの積極補強に動いた。アーロン・クロウ、ダン・ジェニングス、マット・レイトス、ダン・ヘイレンら投手陣を固め、野手でも一塁にマイケル・モース、昨季64盗塁を果たした内野手のディー・ゴードンもドジャースとの大型トレードで手に入れている。 マーリンズの外野陣は、13年総額3億2500万ドル(約384億円)の超大型契約を結んだ右翼のジアンカルロ・スタントンに、中堅にマルセル・オズナ、左翼にクリスチャン・イエリチでレギュラーは固まっていたが、3人揃って25歳以下と若く、彼らをカバーするための第4の外野手の補填が大きな補強ポイントだった。その最後のピースを2億ちょっとの契約で、イチローというレジェンドで埋めることができたのだから、マーリンズが超VIP待遇で迎えるのも、ある意味、当然かもしれない。 その熱意は、イチローにストレートに届いた。