特産品「岡山甘栗」が躍進 「作州栗」でブランド化
岡山県北発の小さな特産品が、躍進を始めている。JA晴れの国岡山勝英統括本部が「作州栗」の名でブランド化を進める「岡山甘栗」。和栗よりやや小ぶりで甘味が強く、渋皮をむきやすいのが特徴だ。収穫して約3週間、氷温で貯蔵すると糖度は約30にもなる。 手作業で切れ込みを入れ、圧力をかけて焼き上げると、ぱっくりと鮮やかな黄色の実が顔をのぞかせる。ほくほくした中にもねっとりとした食感と、口の中に残る優しい甘味が後を引き、一つまた一つと食べたくなる。 国産甘栗の全国唯一の産地、勝英地区では元々和栗が古くから作られてきた。管内にある岡山県森林研究所が長年の苦労の末、中国甘栗の育苗に成功して誕生したのが「岡山甘栗」だ。 JAは耕作放棄地対策や雇用の創出などに向け、新たな特産品として育てようと、2011年から産地化に向けて本格的に動き出した。5年間の育成期間を経て初めて市場出荷したものの、期待した価格は付かなかった。 生産者の所得安定につなげるため、18年から焼き栗機を導入し、契約出荷とイベントでのPR販売にかじを切った。出店は全てJA職員が担う。販売期間を年内の約2カ月間に絞り、地元をはじめ県外にも出向くが、思いを込めるのは地元への出店だ。まずは地域の人にファンになってもらい、栽培してみようと思ってもらうことが狙いだ。 JAでは年間1500~2000本の育苗を依頼し、全量を買い上げて希望する生産者へ販売。各市町村から苗木購入費用の補助事業などの協力を得て、産地化を加速させる。いがの密度が高く、虫害を受けにくいこと、樹上でいがから落果するため取り出す手間が省けることなど、育てやすさから取り組む生産者が年々増え、約100戸が20ヘクタールで栽培する。本年度の販売金額は、過去最高の860万円超になった。 生産者の森本五月さんは本年度100本を新植し、面積は40アールから1ヘクタールに拡大。JAと協力し、毎年地元の小学生を招いて収穫体験や焼き栗の試食などに取り組み、地産地消や知名度向上に努めている。「国産甘栗はここにしかない。勝英地域においしい栗があることを知ってもらうことが地産地消にもつながる」と話す。 5年後、現在の2倍の面積を目標に「中国甘栗の産地のように、見渡す限りの山を作州栗にしたい」とJA担当者は展望する。
日本農業新聞