世界中の両生類を襲う「カエルツボカビ菌」 起源は日本? 朝鮮半島?
世界中の両生類にふりかかる「環境破壊」と「感染症拡大」という2つのリスク
我々研究チームがカエルツボカビ菌の日本を含むアジア起源説を発表した際に、アジアのカエルツボカビ菌が世界に拡散して病害をもたらした理由として、ウシガエルなどの外来両生類を食用もしくは実験動物として、世界中に移送する過程でアジアの菌が持ち出された可能性を指摘するとともに、近年のエキゾチックアニマル・ブームによって、日本産のシリケンイモリなど固有両生類が海外でペットとして人気があり、日本国外に持ち出されて販売されていることもカエルツボカビ菌の拡散リスクにつながっていると警鐘を鳴らしました。 Fisher博士たちの2018年の論文でも、カエルツボカビ菌が世界的に蔓延した原因については、グローバル化に伴う両生類およびそれに寄生する菌の国際輸送が原因であると結論付けており、生物移送の管理を強化する必要を訴えています。 一方で、カエルツボカビ菌による被害は今でも散発的に報告されるものの、対策は進んでおらず、特に被害が深刻とされる中南米の研究者に状況を尋ねても「熱帯雨林の乱開発が進行している現在、カエルツボカビの被害を確かめる以前に、破壊によるインパクトが大きすぎて、手が付けられない」と嘆いていました。 環境破壊と感染症の拡大というダブルのリスクが今、世界中の両生類にふりかかり、その存続に大きな危機が生じることが懸念されています。 (解説:五箇公一 国立研究開発法人 国立環境研究所 生態リスク評価・対策研究室室長)