マテリアル、住宅、ヘルスケア…多様な事業領域を展開する「旭化成」がDX推進のなかで直面した“3つの課題”とは?
笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。6月29日(土)の放送は、旭化成株式会社 取締役 副社長執行役員の久世和資(くせ・かずし)さんをゲストに迎え、お届けしました。
久世さんは、1987年に日本IBM入社。東京基礎研究所にてプログラミング言語やソフトウェアエンジニアリングの研究領域をリード。2005年に執行役員に就任した後、システム開発研究所長、サービスイノベーション研究所長、未来価値創造事業部長などを歴任し、2017年より最高技術責任者(CTO)に。そして、2020年7月に旭化成に入社し、2024年4月より現職に就任。研究・開発、DX(デジタルトランスフォーメーション)を統括しています。
◆旭化成の事業「3つの柱」
多岐に渡る事業で知られる旭化成ですが、久世さんによると、大きく分けて3つの領域を主軸に事業展開しており、1つ目は環境にやさしく付加価値の高い素材・製品をグローバルに展開するマテリアル領域。2つ目は、そのマテリアル素材の強みがふんだんに活かされている住宅領域、そして3つ目は医薬品や医療機器などからなるヘルスケア領域とのこと。 なかでも“ヘルスケア領域”について伺うと、久世さんは「医療機器などを扱う『旭化成メディカル』や製剤を扱う『旭化成ファーマ』、それから “クリティカルケア事業”という位置づけで、AEDをはじめとするいろいろなビジネスを展開しています」と説明。 また久世さんは、これら3つの領域を持っていること自体が旭化成としての強みであり、重要な戦略的要素とし、「その源泉になるのは、やっぱり『マテリアル領域』のところだと思っています」と言及します。
◆DX推進に着手した当時の“苦労”とは?
続いては、旭化成の“DX戦略”について深掘り。久世さんが入社したのは2020年ですが、旭化成は2016年頃にはもうDXに着手していたそうで、「前職でいろいろな業界・業種のお客さまを見てきたなかで“日本はマテリアル産業が強いのに、デジタルの活用が遅れている”という印象を持っていたなかで、(旭化成に)入ってみると“かなり進んでいるな!”という印象を持ったのが正直なところです」と振り返ります。 しかしながら、DXに着手した当初は、旭化成の前身となる旭絹織株式会社が設立した1922年から培ってきた長い研究、開発、製造の歴史があるため、現場ではDXに難色を示す人も少なからずいたらしく、「デジタルに対してなかなか信頼が得られないところを、研究開発のDXリーダーと、生産製造のDXリーダーの2人が、“現場密着型”で現場の人たちを地道に説得して、現場で困っている課題をデジタルで解決していきながら、少しずつ信頼を得ていきました」とのこと。そのタイミングで久世さんが入社します。 そして、2人のリーダーとともに連日夜遅くまで何が課題なのかを検討していたところ、大きな3つの課題が浮かび上がってきたと言います。1つ目は、現場で頑張っている人たちの“上長や経営層の理解を得られていなかったこと”、2つ目は、旭化成は数多くの事業を展開しているものの“うまく展開しているものを他の事業に横展開できていなかったこと”。そして3つ目は、これらの課題を解決するために必要な“強力な人材の育成と確保”でした。 そこで3つの大きな課題を解決するべく、2021年4月にデジタル共創本部という新たな組織を創設し、DX推進のための仕組みづくりやビジョン構築などに尽力していきました。