大量のユーザーがこの夏“2年縛り”を終了、格安SIMが市場競争の台風の目に
ただ、こうして自由になったユーザーが、他の携帯キャリアに移るのかというと、その状況は2年前の2013年とは大きく異なっています。振り返ると、2年前の携帯電話商戦は、MNPによるユーザー獲得競争の激化によって各社が高額なキャッシュバックを実施。しかし、そうした特典は、最近では各社が自主的に規制する動きがみられ、また料金プランや割引施策についても差が生まれないように各社が横並びで内容を揃えている状況で、どこが安いとも高いとも言えない状況が続いています。コスト削減を考えるユーザーにとって、どのキャリアと契約するのが得なのかというメリットが見えにくいのです。
大手キャリアの競争に割って入り勢いを伸ばす格安SIM
こうした中、市場の“台風の目”になる可能性があるのが、大手携帯キャリアの通信回線を借り受けて独自の料金・サービスでSIMカードを提供している事業者(仮想移動体通信事業者:MVNO)が販売している格安SIMカード。市場でシェアのトップを走るNTTコミュニケーションズをはじめ、ニフティ、IIJ、ビッグローブ、DMM.mobile、楽天など様々な企業が参入しています。 ICT総研が5月にまとめた市場規模予測によると、2014年末に241万契約だった契約数は今年末には303万契約まで成長すると予測しており、絶対的な契約数こそ大手携帯キャリアの契約数には及びませんが、TCAがまとめている携帯電話契約数の成長率が毎月1%を割る中で、格安SIMカードの契約数成長率の予測は年25%を超えており、今後大きな市場になることが見込まれています。
成長の背景にあるのは、大手携帯キャリアに対して割安な料金体系によって大幅な通信コストの削減になるというメリットと、大手携帯キャリアの回線を利用できるため快適な通信環境が維持できるという点などです。 例えば、格安SIM市場で業界シェア首位であるNTTコミュニケーションズの「OCNモバイルONE」の料金プランでは、音声通話とデータ通信(月5GB)の組み合わせで毎月の通信料金は2150円。NTTドコモのカケホーダイとデータMパック(月5GB)の組み合わせでは毎月の通信料金は8000円(spモード利用料込)なので、毎月5850円、年間7万円以上のコスト削減が可能になり、家計に大きなインパクトとなります。 なお、通信回線はドコモと同じLTE回線が利用でき、またMNPを利用すれば電話番号もそのまま利用できます。音声通話が30秒20円と従量制である点がドコモの料金プランと異なり、またキャリアメール(spモードメール)が使用できなくなるなどの違いはありますが、実際のところ音声通話やキャリアメールに代わる連絡手段の選択肢は豊富にあることを踏まえると、こうした違いから生じる不便さはあまり大きいとは言えません。ちなみに、契約期間の縛りはプランによって設定されていますが、大手携帯キャリアが課している“2年縛り”ほど長くはないため、プラン変更や解約も自由にできます。 NTTコミュニケーションズの担当者に話を聞いたところ、契約希望者からの問い合わせは次第に増加しており、関心の高さを実感しているとのこと。その理由について担当者は、「SIMフリー端末が手に入りやすくなってきたためユーザーからの問合せは増えています。大手携帯キャリアと比べて割安な料金、MNPが利用できる利便性、データ通信の容量をニーズに合わせて選べる点などが関心の高さに繋がっているのではないかと思っています」とコメントしています。