大量のユーザーがこの夏“2年縛り”を終了、格安SIMが市場競争の台風の目に
SIMロック解除の義務化が選択肢の幅を広げる
こうした格安SIM市場に強力な追い風になるとみられているのが、2015年5月に総務省の指導により携帯キャリア各社が開始した、携帯キャリアから販売されたスマートフォンにどの会社が発行するSIMカードでも使用できるようする「SIMロック解除の義務化」というものです。 これまでは、ユーザーはより安く、通信品質の良い通信キャリアを選ぼうとしたらモバイルナンバーポータビリティ(MNP)を利用して他の携帯キャリアのスマートフォンを新たに新規購入しなければなりませんでした。その背景には、携帯キャリアが販売するスマートフォンは、その携帯キャリアが提供するSIMカード(通信・通話に必要な契約者情報がインプットされたカード)を使用しなければならないという「SIMロック」というものが掛けられていたからです。 その後、2011年頃から各社の一部モデルでSIMロック解除に対応したスマートフォンを発売して手数料を支払えばSIMロック解除ができるようになり、2015年5月以降は携帯キャリア各社が発売する全ての端末が契約後6か月経った後に、SIMロック解除できるよう義務化がスタート。これが多くのユーザーに、「SIMカードを挿しかえれば、今のスマホを使いながら通信費用がもっと安くなるかもしれない」という気づきをもたらしています。いま使っているスマートフォンはそのままに、ニーズに合った通信会社をユーザーの判断で選ぶことができる“自由”がもたらされたのです。 この点について、NTTコミュニケーションズの担当者は、「実際にSIMロックを解除するには6か月間という最低契約期間を超える必要があるため、現時点では大きな影響はありませんが、どの携帯キャリアの端末でもSIMロック解除が可能となる今年の冬以降はユーザーが増えてくるのではないかと期待しています」と述べています。
格安SIMの課題は“難しそう”というイメージ、販売戦略で払拭なるか
一方で、格安SIMが今後シェアを伸ばしていくには課題もあります。それが、SIMカードの扱いについてユーザーの中には慣れていない人が多いということ、そして格安SIMのセットアップはユーザー自身が行わなければならないため、“何だか難しそう”というイメージを持っている人が多いことです。大手携帯キャリアではSIMカードのセットアップや開通確認はショップの店員が行うことが多いため、これまでSIMカードに触ったことのない人も多いのではないでしょうか。 格安SIMは通信販売や店頭販売でSIMカード本体を入手した後に、自分でMVNO事業者に利用を申し込んで開通手続きを行う必要があり、リテラシーの低いユーザーには自分自身で開通手続きを行うことに不安や抵抗があったりして、二の足を踏むユーザーも少なくありません。また、現在利用している通信キャリアを解約して「MNP予約番号」を入手してから、購入した格安SIMカードが使えるようになるまでの間、スマートフォンが利用できないタイムラグがあるといった不便も発生します。 こうした点に対して、家電量販店などでは格安SIMカードを買ったその場で利用できるようにする契約カウンターの設置を拡大しています。先ほどコメントを頂いたNTTコミュニケーションズに聞いたところ、音声通話付きSIMの即日受け渡しカウンターを今年5月以降に全国の家電量販店など16店舗に展開しているとのこと。担当者はこうした施策の狙いについて、「SIMカードの扱いに慣れていらっしゃらない方や、SIMカードを購入後すぐに使いたいという方は多く、初心者の方でも購入・利用しやすい環境を整えることが重要だと考えています。今後のニーズ増加に向けて販売体制やサポート体制を強化していきたいですね」とコメントしています。 こうした施策によって“格安SIMは何だか難しそう”というイメージを払拭することができれば、その割安感や料金プランの柔軟性といったメリットに注目が更に高まり、大手携帯キャリアにとって脅威となる携帯電話市場の一大勢力になるはずです。