新卒1人退職で1104万円損失 「メンタルヘルス対策」を見くびる企業の問題点
自分ではメンタル不調に気付けない
あなたは、今、メンタル不調ですか? ......分からない? それでは質問を変えましょう。 あなたは、今、メンタル関連の病気ですか? ......やはり、分からないですか。 お医者さんから病名の診断結果が下ってないと、「はい、病気です」とはご自分ではなかなか言えないものでしょう。 では、今、あなたは、モヤモヤしていますか? この質問には多くの方がYESと答えるのではないでしょうか。試しに、私は近くにいた周囲の5名に質問してみました。すると、そのうち、なんと4名がYESと答えたのです。それほど、モヤモヤは一般的な感情なのだと思います。 次に本題の質問です。 皆さんは、「モヤモヤ」と「病気」の境目が分かりますか? または、モヤモヤして調子が悪いと感じ、医師に診てもらうべきタイミングが分かりますか? 恐らくほとんどの方は、モヤモヤと病気の境目は分からないでしょうし、医師に診てもらうべきタイミングも分からないでしょう。私自身も分かりません。 私は以前、メンタル不調者200名に聞き取り調査を行ったことがあります。その結果、ほとんどのメンタル不調者が周りから声をかけられて初めて、自分が「病気」であると認識していることが分かりました。どこからが「病気」で、どこまでが「健康」なのか分からなかった、とほぼ全員が答えたのです。 そう、我々は、メンタル不調に自分では気付けないのです。そして、モヤモヤしだしたどこかの時点で、すでに「病気」になっているのです。 考えてみれば、モヤモヤした感情は幼少期から様々な場面で感じることがあったと思います。それは日常的な感情で、その先の病気というべき状況は未経験なわけですから、その境界線を見極められる方はいないでしょう。逆に言うと、個人の力量で「メンタル疾患に陥らないようにする」というのは不可能なのかもしれません。 更にもう一点、知っておいて欲しいことがあります。真面目だったり、責任感が強かったり、優秀な方ほど調子を崩しやすい、と聞いたことがありませんか。統計的なデータがあるわけではありませんが、ここにも誰もが知っておくべきポイントが隠れています。 私を含め多くの方は、様々な壁に向き合い、困難を乗り越えることを「善」とする価値観を持っています。あと少しの努力で成果を出せそうだったり、目標を達成できそうだったりすると、多少無理をしても、その課題に取り組んでしまいます。また、そのような方が周りにいると無意識に完遂することを応援してしまいます。 つまり、我々はストレスを感じたとしても、当事者としてもサポーターとしても、やり遂げることを「当然のこと」と認識し、課題に没頭してしまうのです。 誰かに言われたわけではないけれど残業して完成させた、ここが正念場だと思って1週間程度睡眠時間を削って作業した、クライアントから厳しいフィードバックをもらったけれどグッと堪えたなど、知らず知らずのうちに「健康」と「病気」との境界線を超えて、自分を奮い立たせている可能性があるのです。