神戸泥沼7連敗にもブーイングが起こらなかった理由とは?
降り注いでくる拍手を浴びるのがつらい。横浜F・マリノスに4失点を喫し、試合終了間際に一矢を報いるのが精いっぱいだった試合後。敵地・日産スタジアムへ駆けつけたヴィッセル神戸のサポーターから、ブーイングが起こることはなかった。 一部の男性からは「これで終わりかよ」と怒声が飛んだ。しかし、チームカラーの赤で染まったゴール裏の一角から、ごく自然とわきあがった拍手がそれをかき消す。ブーイングを覚悟していたゲームキャプテンのMF山口蛍(28)は試合後、偽らざる思いを吐露している。 「この状況を含めて、ブーイングされるべき結果と内容、そしていまの自分たちだと思うので。もちろんサポートをしてくれることは本当にありがたいですけど、もっと厳しく自分たちに当たってくれていいというか。そうじゃないと、選手たちも気がつかないところもあると思うので」 クラブワーストタイ記録の6連敗で迎えた、18日の明治安田生命J1リーグ第12節。開幕前に注目を集めた“VIPトリオ”のうち、MFアンドレス・イニエスタ(35)とFWルーカス・ポドルスキ(33)をともにコンディション不良で欠いた一戦は、ミスから先制された前半31分で大勢が決した。 自陣の左タッチライン際からDF宮大樹(23)が正確性を欠いた、無謀にも映るサイドチェンジのパスを逆のタッチライン際へ送る。味方にわたる前に、マリノスのDFティーラトン(29)がボールを楽々とカット。電光石火のカウンターを仕掛けられる。 前がかりになっていたヴィッセルが、一気に数的不利に陥る。ボールを受けたFW遠藤渓太(21)が、ドリブルで左サイドの奥深くまで侵入。折り返しをMFマルコス・ジュニオール(26)に決められた瞬間に、山口の目には「チームが気落ちしてしまった」と映った。 「声を出しても、もう少し応えてくれてもいいんじゃないか。そう思うくらい落ち込んでいるから、そこはもっとみんな前向きになっていかないと」 前節までの6連敗のうち、相手に先制を許した試合が4を数える。試合へ向けて必死に高めたモチベーションが、失点とともに脆くも崩れてしまうのだろう。今日もダメなのか――こんな思いに支配された後半はマリノスのスピードに後塵を拝し、なす術なく3失点を積み重ねた。