神戸泥沼7連敗にもブーイングが起こらなかった理由とは?
「けが人もかなりいて、攻撃の形を上手く作れないなかで失点すると、チームとしてすごく難しくなるので」 笛吹けども踊らず、とたとえてもいいチーム状態に山口はもどかしさを募らせる。それでも「試合中に声をかけ続けていく。それしかない」と、即効性のある処方箋が見つからない窮状も素直に認めるしかなかった。 「気迫というものが感じられなかった。試合が終わってもそのままで、みたいな感じで。ピッチに立っている分、選手たちに責任があるわけで、この状況を一人ひとりがもっと重く受け止めないといけないし、全員がそこを自覚しないと、この先も厳しい戦いが待っていると思うので」 今シーズンから登録無制限、ベンチ入りおよび試合出場がともに5枠に拡大された外国籍選手枠をヴィッセルはフルに活用してきた。しかし、金看板として掲げた“VIPトリオ”は、クラブワースト記録を更新した7連敗のなかで一度もそろい踏みしていない。 3人のなかで唯一、マリノス戦で先発したFWダビド・ビジャ(37)が前線から激しくプレスをかけても、後が続かない場面が何度もあった。苛立ちを隠せなかったのか。後半37分に警告を受けた元スペイン代表のゴールハンターは、ノーコメントで取材エリアを素通りしていった。 開幕から7試合連続で先発フル出場してきたイニエスタも、連敗が伸びる過程でコンディション不良に苦しんでいる。キャプテンとして横浜まで帯同したものの、精彩を欠くチームメイトたちを見ながら何度も頭を抱えていた。 「このチームはどうしても外国人選手に頼っている部分があるから、彼らがけがから戻ってくれば、またチームとしても盛り上がると思う」 チームの現状をこう振り返った山口は、スペインサッカー界で一時代を築きあげた、稀代のプレーメイカーが戦列復帰すれば何かが変わると、一縷の希望を託すしかなかった。 「彼の強いメンタルが、いまは特に必要だと思う。イニエスタがいる、いないで相手の重心も変わってくる。もちろんトライはしているけど、あれだけの選手なので、そこはすごく難しい」 ただ、イニエスタが途中出場を含めて前節まで3試合続けてピッチに立ち、攻撃の形を作っても連敗を止められなかったのも事実。昨夏に加入したイニエスタを軸に、昨年9月に就任したスペインの知将フアン・マヌエル・リージョ前監督(53)、オフに獲得したビジャと、三木谷浩史オーナー(54)の号令下で進められてきた「バルセロナ化」は、開幕からわずか3ヵ月で無残なまでに瓦解してしまった。