リーダーに「教養」を求める企業が急増する背景 上智大学・曄道学長「教養は個性や志を育む」
それで40歳のときにISL(Institute for Strategic Leadership)というエグゼクティブ教育の学校――今は至善館という大学院もつくっていますけど――のリーダーシップの講座を受講し、その後、51歳の時に東大のエグゼクティブ・マネジメント・プログラム(東大EMP)を受講しています。おおまかに言うと、20歳を少し超えたところで学士を取って、30歳の少し手前で修士を取って、40歳でエグゼクティブ・プログラムで学んで、50歳で再度エグゼクティブ・プログラムを受講し直して、さらに60歳でもう一度学び直そうと思いましたが、さすがに60歳で行けるようなよい学校もなくて。それで自分で本を書くことで学び直そうと思って『読書大全』という本を執筆しました。
ということで、私の場合、10年に一度ぐらいまとめて勉強する機会をつくり、自分の頭のOS(オペレーティングシステム)をアップデートすることを意識的に行ってきたのですが、同じような危機感を持っている人はあまりいなくて、友人も同じ会社の中で偉くなることしか考えていないという人がほとんどでした。ですから、曄道先生のイニシアティブで社会人の学びの場を創造しようという試みは素晴らしいことだと思っています。 曄道:ありがとうございます。2022年度からその基盤教育という概念の下で教育システムが稼働することになりましたが、構想は私が学長になってすぐに立ち上げていますので、6年目にしてようやくここまで来たという感じです。
堀内:曄道先生が経済同友会に参加されたことは、上智大学の基盤教育や社会人教育といった構想の実現と関係しているのでしょうか。 曄道:基盤教育という概念の中に教養的なものをどう位置づけるかを考えたときに、やはり経済界の中で何が議論され、何が課題として扱われているのかを意識しました。とりわけ経済同友会は経営のトップたちが来ていますから、企業や経済社会を動かしている人たちが、いま何を感じているのかを知らずに、大学側の視点からだけで社会人向けの学びの場を創造することはよくないだろうと考えました。