「紅麹」サプリ健康被害、人の細胞使い腎障害を初確認…青カビ由来の「プベルル酸」
小林製薬(大阪市)の「紅麹(べにこうじ)」成分入りサプリメントを巡る健康被害問題で、金沢大などの研究チームが、人の腎臓の細胞を用いた実験で、原料から検出された青カビ由来の「プベルル酸」が腎障害を引き起こすことを確認した。厚生労働省は、動物実験の結果を根拠に、プベルル酸が腎障害を引き起こした原因物質だと発表していたが、実際に人の細胞で作用が確認されたのは今回が初めてという。 【図解】小林製薬の紅麹原料の製造工程
同社のサプリを巡っては、摂取後、腎臓にある尿細管の機能が低下するファンコーニ症候群など腎臓病を発症する人が相次いだ。同省は、紅麹菌の培養段階で青カビが混入し、プベルル酸が産生されたとみている。原料からはプベルル酸など3種類の化合物が検出されたが、動物実験では、3種類のうちプベルル酸を投与したラットに尿細管の壊死(えし)などがみられた。
研究チームは、国内の工業メーカーが開発した新技術を用いて、プベルル酸を加えた溶液の中で人の尿細管細胞を7日間培養したところ、細胞障害が明確に確認された。金沢大の荒川大准教授(薬物動態学)は「プベルル酸は人の腎臓に対して毒性があることが検証できた」としている。
細胞を使った毒性試験に詳しい東京大の酒井康行教授(バイオエンジニアリング)の話「人とラットには種差があるため、人の細胞を使って腎毒性を確認できたことは意義深い。実際の体内ではどの程度の濃度でプベルル酸が腎臓に運ばれるかなど、さらに検証する必要がある」