朝鮮半島リスク、中国と韓国は協力すべき【寄稿】
龔克瑜(Gong Keyu)|上海国際問題研究院国際戦略研究所研究員(上海市朝鮮半島研究会副会長)
最近、中国人は朝鮮半島情勢の緊張について強く懸念している。米国大統領選の前後で突発的な事態が発生するリスクは依然として存在する。 1つ目に、レームダックのリスクがある。バイデン大統領が大統領選から撤退した後、バイデン大統領自身の積極性と国内外への影響力が減り、「ガベージ・タイム」に突入した。北朝鮮、ロシア、イランなどの国はこのチャンスの期間を最大限活用し、軍事的な脅しと軍事行動を行い、自分たちの存在感を高め、次期米国大統領との交渉で自国の価値を高めようとする可能性がある。 2つ目は衝突リスクだ。朝鮮半島で再び全面戦争が勃発する可能性は高くはないが、南北関係の対立と対抗による偶発的な事件に対する後続反応が、小規模の軍事的摩擦を引き起こす可能性がある。 3つ目として、核と弾道ミサイルのリスクがある。一方では、南北間の相互軍事的な脅しが「核対決」の水準まで高まった。もう一方では、北朝鮮が核兵器開発の技術的必要性の側面から、核兵器を小型化、軽量化、戦術化するためには、継続して核実験を実施する必要がある。もちろん、北朝鮮が核実験をするためには、自国の核技術の水準や気象条件などの客観的要素や国際情勢に対する認識、周辺国の反応などを総合的に考慮しなければならないだろう。北朝鮮は7回目の核実験の代わりに大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射で慎重な態度を示したともみられる。 4つ目はトランプ・リスクだ。もしトランプ氏がホワイトハウスに復帰すれば、北朝鮮はもう一度トランプ氏と最高指導者同士の「トップダウン」式のアプローチを再開し、朝米関係の改善を希望するだろうし、その場合は、来年1月のトランプ氏の大統領就任前に必ず機会をとらえ、可能な限り早期に軍事行動を完了させなければならない。トランプ氏の不確実性、不安定性、予測不可能性によって、米国の対朝鮮半島政策の調整は不透明だ。トランプ政権は北朝鮮の核保有を認める可能性があり、その場合は韓国の「独自の核保有論」を刺激し、敏感かつ微妙な地域の安全保障状況はよりいっそう複雑になり、解決が困難になるだろう。 5つ目は韓国リスクだ。最近は尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の支持率が低調で、野党は「ミョン・テギュン事件」などで与党に圧力を加えようとするだろう。尹錫悦政権が南北間の対立を触発して国内の視線をそらし、ウクライナとイスラエルの両政府が国家非常事態を宣言して政権を維持したのに習おうとするかに注目する必要がある。 このような状況を考慮すれば、11月5日の米国大統領選と2025年1月20日の米国大統領就任式が2つの重要な時期であり、朝鮮半島と北東アジア地域の情勢に大きな影響を及ぼしうる。北東アジアは、中国、米国、日本、ロシアの4大強国の戦略的利害関係が交差して衝突する地域と認識されており、大国関係の構造的矛盾がこの地域の特殊な地政学的構図を形成してきた。北東アジア諸国には、各国家の利益に応じてそれぞれ異なる安全保障認識と対処戦略があり、地域の安全保障情勢には、安全保障環境の悪化、安全保障のジレンマの深化、安全保障上の相互信頼の乖離、安全保障問題の拡散が現れ、北東アジアの平和と発展は不確実性と脆弱性に満ちている。 大国の競争とゲーム、挑戦のリスクが高まった大きな構図のもとで、米国の政権は交代し、日本の政治は混乱し、北朝鮮とロシアは国内外の困難に直面している。北東アジア諸国のなかでは、中国と韓国は手を握って協力するべきであり、両国は自国の国家利益と戦略的目標から出発し、共同の認識を探して協力し、共に進んで地域の平和と安定、繁栄に寄与し、北東アジア地域の全般的な安全保障の状況と秩序を共同で維持し、安定させなければならない。 韓中日首脳会議の開催、韓中高官級戦略対話、シンクタンク・フォーラム、地方自治体と青少年交流が続き、韓中関係は雪解けの兆しをみせている。中国と韓国はこの機会を逃さず、次のようなことを行うよう努めなければならない。 1つ目に、韓中関係を再確立しなければならない。中国と韓国は情勢をよく観察し、立場を変えて考え、相手側の国の役割と地位、影響を新たに認識し、両国関係の重要な意味を認識し、両国関係を再評価して調整し、韓中関係と北東アジア情勢が両国の共同利益に有利に発展するよう導かなければならない。 2つ目に、中米関係を適切に管理しなければならない。中米関係はこの地域の平和と安定に影響を及ぼす重要な要素だ。中国と韓国のいずれにとっても、米国との関係は外交的な優先順位だ。中米関係が適切に管理されれば、韓国はこれ以上「中国と米国の間で必ず片方を選択しなければならない」という難しい状況に直面することはないだろうし、中米協力と中韓協力が互いに向き合いながら進むことができる。 3つ目に、非対決的な多国間関係を構築することだ。中国と韓国は地理的に近く、苦楽を共にしており、経済的に相互依存していて、経済発展の要求を満たし、各自の利益にも合致する構造的に相互補完的な関係を築いている。 東アジアの重要な国家である中国と韓国は、東アジア協力の「先導者」、地域の平和と安全保障を維持する「安全装置」、(衝突が広がる可能性がある)ホットスポットの問題を解決する「圧力低減バルブ」になる必要がある。中国と韓国が「小異を捨てて大同につく(求同存異)」「和して同ぜず(和而不同)」「己の欲せざる所は人に施す勿れ(己所不欲勿施於人)」などの東アジアの伝統的な概念によって、欧米の「普遍価値観」を超越して代替できるならば、両国の発展と未来は緊密につながるだろう。 4つ目に、「新しい共同認識」と対話メカニズムを稼動させなければならない。信頼不足は朝鮮半島と北東アジアの安全保障が直面している深刻な問題だ。すべての関連当事国は相互の信頼回復を出発点として、各国の共同利益を目標にして、共通点で協力を模索し、信頼の溝を埋め、信頼メカニズムを構築しなければならない。中国と韓国は、大国の関係が北東アジアの平和と安定に与える影響を関連国が正確に管理する方法についての対話を進めるよう求める新たなイニシアチブを共同で開始できる。この対話は、中国と韓国などの2国間対話で進めることもでき、共同の利害関係をもつ北東アジア諸国が共同で参加する複数の2国間対話、少数の多国間対話、さらにはより広範囲な多国間対話で進めることもできる。 龔克瑜|上海国際問題研究院国際戦略研究所研究員(上海市朝鮮半島研究会副会長) (お問い合わせ japan@hani.co.kr )