「群衆の中には〈E〉の連中がたくさんいる」…ロシアの反戦集会に潜む政治警察が反体制者を摘発するヤバすぎる手口
「NO WAR 戦争をやめろ、プロパガンダを信じるな」...ウクライナ戦争勃発後モスクワの政府系テレビ局のニュース番組に乱入し、反戦ポスターを掲げたロシア人女性、マリーナ・オフシャンニコワ。その日を境に彼女はロシア当局に徹底的に追い回され、近親者を含む国内多数派からの糾弾の対象となり、危険と隣り合わせの中ジャーナリズムの戦いに身を投じることになった。 【写真】習近平の第一夫人「彭麗媛」(ポン・リーユアン)の美貌とファッション ロシアを代表するテレビ局のニュースディレクターとして何不自由ない生活を送っていた彼女が、人生の全てを投げ出して抗議行動に走った理由は一体何だったのか。 長年政府系メディアでプロパガンダに加担せざるを得なかったオフシャンニコワが目の当たりにしてきたロシアメディアの「リアル」と、決死の国外脱出へ至るその後の戦いを、『2022年のモスクワで、反戦を訴える』(マリーナ・オフシャンニコワ著)より抜粋してお届けする。 『2022年のモスクワで、反戦を訴える』連載第30回 『「町中に『戦争反対』のステッカーを貼るの!」平和を訴えていた幼い少女にまで襲い掛かるロシア警察の「魔の手」』より続く
この戦争には終わりも果ても見えない
反戦を訴えたゴリノフの次に刑事訴追されたのは、以前から一貫してプーチンを批判してきた反体制派政治家イリヤ・ヤーシンだった。ヤーシンは戦争の初日から反戦活動を始め、ブチャ、イルペン、マリウポリでのロシア兵の蛮行をロシア国民に語った。たくさんの脅迫を受けながらも、ヤーシンはロシアから出国しなかった。自分の国の将来を真剣に憂いていたからだった。ヤーシンは最後の動画でこう語っていた。 「プーチンやその周囲がどんな言葉を使ってイチジクの葉のようにこの出来事を覆い隠そうとしようとも、特別作戦とか、非ナチ化、非軍事化などという言葉で呼ぼうとも……、最初の瞬間からこれが戦争であることは明らかだ。何百万もの人びとが生きながらえようとして自分の家を捨て、逃げだしている。血の海、涙の海だ。だが残念ながら、この戦争には終わりも果ても見えない」 ヤーシンに刑期が言い渡された時には、何十人もの支持者がバスマン裁判所に集まっていた。その中には多くの知り合いの顔があった。
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