「群衆の中には〈E〉の連中がたくさんいる」…ロシアの反戦集会に潜む政治警察が反体制者を摘発するヤバすぎる手口
群衆の中には〈E〉が…
「なぜあなたはヤーシンへの支持を表明しに来たんですか?」 若い記者がわたしにきいた。 「ヤーシンはロシアでもっとも野心的で、若く、頭脳明晰な政治家です。ロシアの未来はヤーシンのような人にかかっています。だからわたしは彼を支持するためにここに来たんです。いまこそヤーシンにはわたしたちの支持が必要です。戦争は21世紀のもっともおぞましい犯罪です。この戦争を始めた犯罪者たちは、ゆくゆくは国際刑事裁判所で被告として裁かれることになると確信しています。彼らがいまウクライナでおこなっていることは正気の沙汰ではありません。彼らは権力を自分の手中に握り続けたいだけなのです」 何日か前にゴリノフを支持するためにメシチャン裁判所に来ていたアーニャやドミートリーなどの知り合いもいた。 「なんでそんなにはっきりしゃべるの? 群衆の中には〈E〉の連中がいっぱいいるのに」 アーニャは驚いて言った。 「〈E〉って誰のこと?」 「知らないの? 過激派対策センター、政治警察よ」
突然詰めかける「記者」
この時、人ごみの中から背の低い若者が急にあらわれた。記者だと名乗って煽るような質問を始めた。わたしは答えなかった。 「軍の信用を貶めたとして、あなたは行政訴追されたのをご存じですか?」 探るような声で若者は言い、答えを待たずに人ごみに消えた。 どういうことだ。すぐに弁護士に電話した。 ザフヴァトフ弁護士は情報をチェックしてくれた。たしかに「ロシアの日」に向けたネットへの書き込みの件で、わたしは訴えられていた。その中でわたしはこう書いていた。「自分の国を誇りに思う理由がわたしには見当たらない。ロシア人であることは、今では屈辱的なレッテルとなってしまった。ロシアは夜陰に乗じて独立国を攻撃し、ウクライナ国民を根絶やしにしようとしている。ロシアは自国を発展させることをせず、他国の領土を奪いとっている」 バスマン裁判所では警察がヤーシン支持者の中で目立つ者たちを護送車に投げ込み、あっというまに連行していった。 「歩道を空けなさい」 警官が拡声器で叫び、群衆を追い払おうとした。 「ヤーシンに自由を! ヤーシンに自由を!」 ヤーシンが裁判所から連れ出され、護送車に収容された時、群衆は叫んだ。 数ヵ月後、裁判所はイリヤ・ヤーシンに懲役8年6ヵ月の判決を下した。
マリーナ・オフシャンニコワ
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