人口863人、テキサス州の小さな町にビットコインマイニングがもたらした恩恵──ドキュメンタリーの監督に聞く
雇用創出
──アメリカにおけるビットコインマイニングのストーリーは、ある意味、活性化のストーリーでもある。全米のビットコインマイニング施設を視察した際の感想を聞かせてほしい。 ビットコインマイナーが小さな町に集まってくるのは、撤退した産業からの余剰エネルギーや、建てすぎた変電所や発電所からの安価な電力がそこにあることが多いからだ。ビットコインマイナーは、安い電力を追い求めなければならないので、そのような場所に向かうのは自然なことだ。 彼らが向かう小さな町には多くの場合、高給や安定した仕事があまりない。今のところ、どんな産業もない。小売店やコンビニエンスストアが少しはあるかもしれないが、決して多くはない。町を本当に活性化させるには、何らかの産業が必要だ。 ビットコインマイニングは興味深い。ビットコインマイニング施設1つあたりの雇用はそれほど多くないかもしれない。しかし、その周辺に多くの外部雇用を生み出すことができる。 映画では、トラック運転手、修理技術者、コンクリート作業員、警備員などの請負業に従事し、施設に出入りする人々が大勢いることがわかる。施設のことを考えただけでも、40人の労働者を養うためにキッチンを開設する予定だ。そうなると5~10人分の雇用が増えることになる。 ──技術者の一般的な賃金はどれくらいだろうか? 多くの場合、最低賃金の2倍で、新人技術者の時給は20ドルから30ドル。そこから上がっていく。ドキュメンタリーに含められなかったが、ギャラクシーは町の一般的な賃金より20%多く支払っている。 ビットコインマイニングはやや収益性の高い産業だ。だから、ある種のブルーカラーレベルの仕事でも、多くの人々の生活水準を引き上げることができた。
オープンな姿勢
──ギャラクシーやHeliosについて、何か特別に惹かれる理由があったか? 主にアクセスだ。ギャラクシーは門戸を開こうとしていた。企業はパブリックイメージに配慮しなければならないが(ギャラクシーは上場企業)、ドキュメンタリー映画のクルーに協力することに、彼らが積極的だったことに感銘を受けた。撮影に協力するというのは必ずしも気分の良いものではないからだ。 もう1つ、テキサス州のビットコインマイニングの話は、エネルギーやビットコインに注目が行きがちなので、私はあまり興味がない。私は小さな町の話や、町の生活に参加することにとても興味があった。我々が取材したほとんどの人たちは、対話にすぐに応じてくれた。だから昨年下見したときに、一段と魅力的に感じられた。 我々が到着した日に竜巻が発生し、隣町の大部分が破壊された。本当に興味深かったのは、周辺の町から多くの人々が車で救援に向かったことだ。 物資を積んだ車が何キロ続き、その小さな町に入ろうとしていた。テキサス州西部のこのような町に住む人々は、まさに異質な存在であることがよくわかった。彼らはお互いを気遣う。良き隣人だ。 ──あなたの映画を見ていると、間違いなくそう感じる。特にタイニーホーム(小さな家)コミュニティのシーン。あのようなシーンを入れることで、何を伝えたかったのか? 映画の最初のタイトルは『Tiny Home Kingdom(タイニーホーム・キングダム)』だった。小さな家と巨大なビットコインマイニング施設を対比させようとした。アイデアとしてはいい感じだった。 でも、その路線で行くには、もう少しくだらない作品にする必要があっただろう。誰かの小さな家で1週間一緒に暮らすとかね。 タイニーホームは、テキサス州北西部パンハンドル地域で通常見られるようなコミュニティではないコミュニティと協力し、話をすることに対して、スプールがいかにオープンかを示していた。 彼らは2015年頃、タイニーホームのための場所として門戸を開いた。多くの都市はタイニーホームを迷惑に感じたり、資産価値を下げると考えるため、タイニーホームをブロックするように区画整理されている。 スプールは、人々を呼び戻す切り口を見つけようとしていた。それは、彼らが新しい隣人を迎え入れることに興味があることを示している。ただ、次に引っ越してきた隣人がたまたま、800メガワットのビットコインマイニング施設だった。