古田敦也全盛期の牙城を崩した西山秀二 食券提供の南海から高級車が並ぶ広島へトレードで「これがプロ野球や!」と喜んだ
── 目標とする捕手は誰だったのですか? 西山 野村克也さんや森祇晶さんの本もかなり読んで勉強しました。でもやはり、のちに2004年アテネ五輪のチーフスコアラーも務めたほど、相手の分析に長けていた柴田さんの教えが僕のベースでした。僕が中日コーチになってからも、電話で助言をいただきました。 ── 広島時代、相手には村田真一さん(巨人)、古田敦也さん(ヤクルト)、中村武志さん(中日ほか)、矢野燿大(阪神ほか)、谷繁元信さん(横浜ほか)、錚々たる捕手がいました。 西山 打たれれば、結果論で捕手は周囲から何かしら批判を受けるものです。ベンチを相手に野球をしている時期もありました。僕は94年と96年にベストナインとゴールデングラブ賞を受賞したのですが、捕手として確固たる自信がついたのは、96年の夏頃からです。そして、そこからあらためて勉強し直し、捕手が何たるかを理解していったのです。 ── "西山流配球論"とはどういうものでしょうか。 西山 僕の場合は、相手打者が打席に立った時に「最終的にこうやって打ちとる」というイメージがあります。そこに向けて、初球をどのようにして入って、カウントを整え、最後はこの球で勝負するといったように組み立ていきます。 ── 投手のウイニングショットを想定して、配球を組み立てていくのですね。 西山 「ストライクになったらこうすればいい」「ボールになればあの球でいこう」といったように、いくつかのパターンを想定しておきます。たとえば、カウント1ボール2ストライクからの勝負球がボールになっても、もう1球ボール球で様子を見られる。「困ったらアウトロー」でいいということはない。フルカウントになったら「手詰まりだろう」という人がいますが、捕手は手詰まりになることはない。もっとわかりやすく言えば、二死満塁でフルカウントになると、野手のなかには「ど真ん中で勝負しろ」と言いますが、そこ以外の球を投げさせてこそ捕手のリードだと思います。もちろん、打者を観察し、反応を見て、時には心理を洞察することもあります。