〈世界トップクラスの観光受け入れ地・京都〉混雑軽減やマナー啓発では足りない、オーバーツーリズム対策の視点とは?
本当の意味で“被害”を減らすには
実はオーバーツーリズムの対策は、オーバーツーリズムをどのように定義するかで変わってくる。「観光地にキャパシティ以上の観光客が押し寄せること」という定義であれば、対応策は観光客の制限、平準化、教育、キャパシティの増加などになってくる。 前述したように京都市は観光客の制限、平準化、教育などを行っている。しかしキャパシティの増加は簡単ではない。 観光関連事業に関して「給与待遇がよさそうか」という質問に対して、そう思う(0.8%)、ややそう思う(7.2%)と答えたのは8.3%で、あまりそう思わない(31.8%)、思わない(19.3%)は51.2%となっている。仕事として安定してそう、休みをとりやすそうという質問に対してもほぼ同様の回答構成で、観光関連事業は不安定で休みのとりくい分野と認識されている。 観光客に対応するキャパシティは、対応する人員による。観光事業に対して上記のような認識であれば、観光需要に対応した従業員を採用するのは難しく、受け入れキャパシティの増強は簡単ではない。
また、オーバーツーリズムを「観光客が及ぼす悪影響に対して地域が十分な利益を得られていない状態」と定義すると、別の対応策が見えてくる。対応策として、観光客からの利益を明確な形で地域住民に還元するのである。 わかりやすい事例は米国のオーランドであろう。オーランドは宿泊費の6%を宿泊税として徴収しているが、それを観光公共インフラに使っているので、この点で地元納税者(住民)の負担が減っている。 観光から得られるベネフィットをどのように住民に還元するかという観点で考えると、観光客数の増加以上に観光客一人あたりの消費額を高くすることが重要となりそうだ。高くなった消費の一定額を地域住民へと還元できる。 観光事業者のベネフィットおよび地域への還元が高まれば、それが従業員への待遇向上にもつながり得る。それで担い手が増えてくれば、受け入れキャパシティの増強にもつながる。ハッピーサイクルになるのではないだろうか。