大人数の意見に対して、自分の意見を言うのが苦手だと話す33歳女性に、鴻上尚史が伝えた「ストレスがたまった時こそ能動的に活動する」の真意とは
【鴻上さんの答え】 ぽんぽこりんさん。ぽんぽこりんさんの相談は、ふたつに分かれていると感じます。 ひとつは、「嫌なことがあったとき、どうしてますか?」ということですね。もうひとつは、「大人数ですごしているときに『ノー』と言える力を身につけたい」ということだと思います。 僕もぽんぽこりんさんが書くように、嫌なことがあった時に、「愚痴を聞いてもらうのは避けたい」と思っています。だって、グチると、自分はすっきりしても、相手は嫌な気持ちが残るんじゃないかと思っているからです。 実際に、人のグチを延々と聞かされると、なんだかどよ~んとした気持ちになるじゃないですか。 まあ、お互いが、時々、グチを言い合う関係なら別かもしれません。 それでも、相手の都合が悪かったり、体調が優れない時にグチを言うのは、避けたいことだと思っています。 僕は、俳優に(若ければ特に)「人間以外でストレス発散できる方法を見つけた方がいいよ」と言います。 お互いがグチを言い合って許せる関係は素敵です。Aという俳優とBという俳優がつきあっていて、Aが演出家に激しく怒られたり、オーディションに落ちたりしたら、Bにグチって、なぐさめてもらう。 それはとてもいい関係でしょう。 問題は、Aに問題が起こった時に、Bがとても大切な瞬間だった時です。 昔、ある若い女優が初日に調子が悪そうに見えたことがありました。なんだか睡眠不足のような感じがしたのです。 どうしたんだろうと心配しながら、芝居の幕は開き、公演はとりあえず終わりました。 その女優さんはホッとしたのでしょう。体調が悪かった理由をぽつりと僕だけに話しました。 つきあっている彼が、自分の現場で演出家に激しく怒られて役を降ろされてしまった。傷ついた彼は、慰めてもらおう、グチを聞いてもらおうと、昨夜、女優のアパートに来た。可哀相だから、朝方まで彼のグチを聞いてあげた。だから、睡眠不足になった。 その話を聞いて、僕はこう言いました。 「もし、君がプロの俳優になりたいのなら、彼のグチをしばらく聞いた後、『明日、私は大切な初日だから、よく寝ないといけないの。申し訳ないけど、帰ってくれない?』と言えることが必要じゃないかな」 残念ながら、初日の彼女の演技は、今までの演技の中で一番残念なものでした。表情と声、動きに強さと繊細さがないと感じました。疲れが出ていると思えたのです。
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