助演男優賞・奥田瑛二「杏ちゃんの親は俺でもある。2人でもらったようなもの」「報知だけもらってなかった」…報知映画賞表彰式
「第49回報知映画賞」の表彰式が16日、東京・渋谷区のセルリアンタワー東急ホテルで行われた。 【動画】どんな話をしているのか…石原さとみと楽しそうに話す奥田 助演男優賞の奥田瑛二(74)は、受賞作「かくしごと」(関根光才監督)で親子を演じた女優・杏(38)がサプライズで駆けつけると、感極まった様子。「えっ?(在住先の)フランスにいるはずなのに、どうして?」。信じられない“娘”との壇上での再会。サプライズで駆けつけた主演の杏と奥田は、うれしさ余って激しくぶつかるのではと思うほど、ダイナミックな抱擁を交わし、喜びを分かち合った。 ハグの後、写真撮影を終えると「もう、ダメだ」となった奥田の涙腺は決壊寸前。見られまいと舞台袖に行くと杏が肩を持って激励し、再び中央に戻ってきた。 「かくしごと」では、娘と複雑な過去を抱える認知症の父親を演じた。杏の実際の父・渡辺謙(65)とは旧知の仲だ。撮影現場では「話したいことはたくさんあった」が、役に集中するため、あえて会話を避けた。 「共演が決まった時、『渡辺謙の娘と共演なんて実の娘(安藤サクラ)と共演するよりも、意識して緊張してしまうだろうな』と思った。でも、今は杏ちゃんの親は俺でもあるんだよ、という思い。この賞は2人でもらったようなもの」と感謝した。その言葉に杏も「カメラの回っていない時も役の姿でおられ、演じるその背中が格好良かった。(撮影後も)『どうされているかな』とずっと特別な思いがありました」と明かした。 表彰式の控室に入った時、奥田は「泣いてしまうだろうな…」と漏らしていた。式後、「ちらっと見たら杏ちゃんもウルウルしてたんでね」。何度も天を仰ぎ、“父親”らしく、ぐっと涙をこらえたという。 もうひとつ、奥田の夢がかなった日だった。「あまたの賞をもらってきましたが、『報知』だけ、自分はもらっていなかった」。ユーモアと恨み節を込めながら、悲願だったことを強調した。そのブロンズ像を贈られて手にした時、驚きの表情を見せた。 「想像よりもはるかにずっしりした重みだったね。帰ったら、これはやっぱり、家族で並べて飾らないとね」。次女・安藤サクラ(12年の第37回で助演女優賞)、長女・安藤桃子監督(14年の第39回「0・5ミリ」で作品賞)に続き、家族で3人目の受賞。「家に娘のがあるから、触りたい衝動に駆られて手を伸ばしたけれど止めた。この日まで我慢したかいがあったよ」。受賞作で演じた役とはまったく別人のようなダンディーさで人懐っこい表情を見せた。(内野 小百美) ◆奥田の主な受賞歴 ▼1986年 「海と毒薬」で毎日映画コンクール男優主演賞 ▼90年 「千利休 本覺坊遺文」で日本アカデミー優秀主演男優賞 ▼94年 「棒の哀しみ」で毎日映画コンクール男優主演賞、キネマ旬報、ブルーリボン賞などで主演男優賞 ▼2006年 監督作「長い散歩」がモントリオール世界映画祭でグランプリ ◆奥田 瑛二(おくだ・えいじ)1950年3月18日、愛知県生まれ。74歳。天知茂さんの付き人を経て、80年代にドラマを中心に活躍。86年「海と毒薬」で映画初主演。「棒の悲しみ」(94年)でブルーリボン賞主演男優賞受賞。2001年に「少女」で監督デビュー。次女・安藤サクラの夫は俳優の柄本佑。 ◆選考委員 荒木久文(映画評論家)、木村直子(読売新聞文化部映画担当)、見城徹(株式会社幻冬舎代表取締役社長)、藤田晋(株式会社サイバーエージェント代表取締役)、松本志のぶ(フリーアナウンサー)、YOU(タレント)、LiLiCo(映画コメンテーター)、渡辺祥子(映画評論家)の各氏(五十音順)と報知新聞映画担当。
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