働く人は誰もが知るべき「比較優位」という重要概念 交易が経済発展をもたらしたのには理由がある
シルクロード交易は相対的な優位さ(「比較優位」という)を活かしたものであり、絶対的な優位さにもとづくものではなかった。 たとえある国がすべてのものを隣国より効率よく生産できたとしても、すべてを国内で生産するより、交易をしたほうが利益は大きくなる。 ただし、砂利のように重くて価値の低いものに関しては、現代の社会でも、輸入しないほうがいい理由がある。ものの価値に比べて、輸送コストが高ければ、交易はかえって不経済になる。
車輪の発明後も、道は悪路ばかりだったので、たいていは馬や駱駝(らくだ)の背に載せて運ぶほうが荷車で運ぶよりも容易だった。 その結果、陸路の交易で商われるのは、ワインやオリーブ油、宝石、貴金属、香辛料といったものに限られていた。西暦300年頃、荷馬車1台分の小麦の値段は、輸送距離500キロで2倍になった。 (翻訳:黒輪篤嗣)
アンドリュー・リー :オーストラリア国立大学経済学部元教授、オーストラリア代議院(下院)議員