『シビル・ウォー アメリカ最後の日』で注目のケイリー・スピーニーが語った「父を知らなかった幼少期、そして今の私」
── アレックス・ガーランド監督の持ち味は、たとえばケイリーさんの主演作『プリシラ』のソフィア・コッポラ監督とは異なります。各監督のアプローチの違いにはどのように対処していますか? ケイリー ソフィアとアレックスはまったく性格が違う。二人の映画も、彼ら自身の違いを映し出しています。アレックスはなんというか、ガンガン行く感じ。作品もパンチが効いていて、無邪気で派手。一方で、ソフィアの映画は彼女に似て、多くを語らず、静かで繊細です。 二人をはじめ、これまで一緒に撮影をした多くの監督を愛してやまないのは、彼らがそれぞれに特異な存在だから。ソフィア・コッポラやアレックス・ガーランド、フェデ・アルバレス(主演作『エイリアン:ロムルス』の監督)のような人は他にいない。いわば、彼らは彼ら自身の監督です。自分以外の誰にもなろうとしない、というか、自分以外の何者かになる方法を知らない人たち。 アレックスの映画を観れば、最初の5分で彼の作品だとわかる。それがエキサイティングなんです。縁あって、明確なヴィジョンのある、とてもユニークな人たちと仕事ができてラッキーです。 ── 違いを楽しんでいるわけですね? ケイリー そうですね。私自身、さまざまな種類の映画で、いろんなトーンやキャラクターを演じてみたいし、多種多様な意見や声色をもつ監督たちと出会いたい。たとえば若い女優として、ソフィアのような女性監督と組むのは(男性監督と組むのとは)また全然違う、ユニークな経験です。 アレックスとは親密な関係なので、彼は私がどういう人間かわかっていて。今回演じた報道カメラマンのジェシーという役にも、私自身のことをたくさん書き込んでくれました。私はいつだって何かを変えたいし、常に自分に挑戦していたい。一つのゾーンに閉じこもりたくないんです。
芝居を通して世の中のために何かしたいという使命感
── 『シビル・ウォー アメリカ最後の日』が描くのは、現代アメリカで起きる内戦。監督はこの映画に、政治とジャーナリズムが機能不全に陥っている現状への危機感を落とし込んだと話しています。その中でジェシーは、ジャーナリズムの未来を象徴するキャラクターだと思いました。そのことはどう意識していましたか? ケイリー ジェシーが新しい世代を代表していると感じるのは、理にかなっています。私自身、新世代だから。ジェシーと同じように、私も将来に多くの不安を抱いていて、何かしなければという使命感に燃えています。彼女にはカメラの才能があり、それで世の中のためになることをしたいと考えている。そして私は、自分の演技を通して、今回のような映画が何人かの人々に会話のきっかけを与え、彼らが心を開き、世界の現状に対して何ができるかを切に考えるようになればと願っています。 アメリカ人であろうとなかろうと、今は誰もが政治的な二極化とその結果に恐れを抱いていますよね。今作が興味深いのは、こんなメッセージを発信しているところです。「どんな政治的見解を持っていようと、こんなこと起こってほしくないよね? この事態は避けよう。そのために、自分たちには何ができるだろう?」。私も同じ気持ちです。より良い未来が欲しいし、そこに辿り着けるという希望もある。私の同世代の多くもそう感じていると思います。