彬子女王殿下、英国留学前のご記憶「皇太子同妃両殿下(当時)からのお茶のお招き」
皇族は、海外旅行前に、「本来は古来皇室にとって特別なお社である伊勢の神宮に参拝するのが通例」で、彬子女王殿下は、長期の英国留学という大きな節目にさいし、「神宮と明治・大正・昭和天皇陵と皇后陵にそれぞれご報告のための参拝をさせていただいた」そうです。 【書影】彬子女王殿下の英国留学記『赤と青のガウン』 学習院大学の学生時代、一度目の留学前には、天皇陛下(当時、皇太子殿下)が、「(オックスフォード大学マートン・コレッジでの)ご留学時のエピソードを、ユーモアを交えながら聞かせてくださった」とのこと。 また留学中は、父宮様の留学中の思い出話も、当時を知る英国の方にお聞きになられたようです。そうした彬子女王殿下のご体験をご紹介しましょう。 ※本稿は、彬子女王著『赤と青のガウン』(PHP文庫)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
「オックスフォードという場所はきっと素敵なところに違いない」という思い
初めての海外生活を目前に控え、不安でいっぱいだった19歳の夏。皇太子同妃両殿下(当時)が私を東宮御所にお茶にお招きくださった。 東宮御所でのお茶はもとより、私一人でうかがうことすら初めてのこと。何を着たらよいのか、何をお話ししようかと、お目にかかるまではとても緊張したことをよく覚えている。応接室に通されると、両殿下がにこやかなお顔で出迎えてくださった。 オックスフォードで学んでおられた両殿下。お二方のご留学時のエピソードを、ユーモアを交えながら聞かせてくださった。 とくに皇太子殿下は私が所属することに決まったマートン・コレッジの御出身。食堂での食事や洗濯の方法、図書館で本をどのように借りるか、ご自身はどの図書館がお好きだったかなど、懇切丁寧に教えてくださった。 たしか殿下のご留学時代のアルバムもみせていただいたように記憶している。最後には「必ずよい経験になるから楽しんでいらっしゃい」と送り出してくださった。 このときのお話のおかげで、漠然としていたオックスフォードのイメージがより現実的なものとなった。そして、両殿下がこれほど愛情をもって話されるオックスフォードという場所はきっと素敵なところに違いないと思えるようになったのである。 その日の夕食の席でのこと、父に「皇太子殿下が図書館の使い方などを教えてくださって......」と興奮しながら報告をした。すると、一瞬の沈黙をおいて父がひと言。「図書館なんてあったかな......」 その言葉に驚愕しすぎて、両殿下からいただいたアドバイスの話はそこで終わってしまった。