彬子女王殿下、英国留学前のご記憶「皇太子同妃両殿下(当時)からのお茶のお招き」
マートン・コレッジについて「事前にお話をうかがえたことは幸運な偶然だった」
あまり知られていないことであるが、日本の大学とオックスフォード大学では運営の体制が大きく異なる。オックスフォード大学のなかには40近くのコレッジ(学寮)と呼ばれる組織がある。 各コレッジは独自の予算で運営をするため、キャンパスが違うだけではなく、寮の充実度も食堂のおいしさも学力レベルまでも違う。 そして、毎年「ノリントン・テーブル」と呼ばれるコレッジの学力ランキングが発表されるため、各コレッジは優秀な教員・学生の確保に鎬を削る。つまり「オックスフォード大学」というのはコレッジや共有の図書館、レクチャーホール、実験施設などの入れ物のようなものである。 たとえていうならば、学習院、慶應、早稲田、青山学院......といった東京都内の大学をすべてひっくるめて「東京大学」というような感覚だろうか。 つまり、オックスフォード大学を卒業した人間にとっては、どのコレッジに所属したかということのほうが重要になる。だからこそ留学先が皇太子殿下と同じマートン・コレッジになり、事前にお話をうかがえたことは幸運な偶然だったのである。 授業の形態もオックスフォードと日本とは違う。所属コレッジに関係なく専攻の学生が集まる「レクチャー」、コレッジで行われる10人程度の「セミナー」、先生(チューター)と学生が1対数人(多くても3人まで)で個人指導される「チュートリアル」の3種類がある。 これらの授業はすべて、1年と3年の年度末(語学、理科系など4年制の科目は2年と4年)に行われる試験に向けてのものなので、いわゆる「出席点」や「平常点」での評価は存在しない。 毎回授業に出て、よいエッセイ(小論文)を書いていたとしても、試験の出来が悪かったらそれまで。進級できない人や卒業できない人も少なくない。 この情け容赦のない制度のため、オックスフォードの学生はものすごく勉強をする。そして試験前などは街全体にぴりぴりムードが漂うのである。