富山・立山トンネル、日本唯一のトロリーバスが今月ラストラン…20年以上走らせた運転士「最後まで無事故で」
富山県と長野県を結ぶ立山黒部アルペンルートの立山トンネル(全長3・7キロ)内を走行する日本唯一のトロリーバスが、30日に引退する。トロリーバスは戦後に大都市圏で普及したが、車社会の発達で衰退。アルペンルートでも車両の老朽化に伴い電気バスに切り替わることが決まった。運転士や整備士は「『トロバス』を最後まで無事故で」と気を引き締める。(富山支局 吉武幸一郎) 【動画】国内唯一の「トロリーバス」まもなく営業終了
長く走り続けたクリーム色にオレンジのラインが映える車両は、塗装の剥がれやサビが目立つ。運転士の阿部光良さん(45)は、洗車するたびに「こんなにも古くなったんだ」と時の流れを痛感する。
アルペンルートの全線開業は1971年。立山トンネルでは当初ディーゼルバスが走っていたが、観光客の増加に伴って運行数が急増し、内部に排ガスがこもるようになった。周辺が国立公園のため環境対策を迫られ、打開策として96年に導入されたのがトロリーバス。以来、1990万人の観光客らを運んできた。
阿部さんは運行会社「立山黒部貫光」(富山市)に入社後、ケーブルカーに乗務していたが、会社の指示でトロリーバスの運転に必要な免許を取得した。
車幅は普通の大型バスと同じ2・5メートル。幅4メートルのトンネル内は圧迫感があり、時速40キロで走ると壁が迫ってくるように感じる。ギアはなく、走り出すと急発進のように一気に加速するため、感覚をつかむのに苦労した。客を乗せての初勤務は2002年4月。緊張で足が震え、乗降口のステップにつまずいたという。
阿部さんは室堂―大観峰間(片道10分)を多い日に10往復ほど運転する。薄暗いトンネル内はより速く感じるのか、乗客からは「よくあのスピードで走れるね」と褒められたり、正確な運転から「自動運転なんでしょ」と言われたり。「いろいろと腕の見せ所があるんですよ」と胸を張る。
導入から四半世紀を超え、車両の維持は年々困難になっていた。製造されなくなった部品もあり、技術長の早川忍さん(51)は「引退した他社の車両から部品を譲り受け、なんとかしのいできた」と打ち明ける。