〈解説〉アフリカゾウは「名前」を使うと判明、オウムやイルカとは大きな違いも
名前が名前であるためには
研究者らが行った新たな分析では、異なるゾウが同じ受け手に呼びかける際、同じ名前を使うかどうかについては、矛盾した結果が出ている。 考えられる説明のひとつは、異なるゾウが同じ受け手に呼びかける際には、ニックネームのような名前の派生形が使われている、というものだ。 「エリザベス、リズ、エリーといった人間の名前とニックネームが、異なる単語であるにもかかわらず共通する特徴を持っているように、異なるゾウが同じ個体に呼びかける際には、微妙に異なるラベルが使われるのかもしれません」とパルド氏は言う。 データが少ないことが問題だと語るのは、イスラエル、テルアビブ大学の動物学教授ヨッシ・ヨベル氏だ。非常に興味深いテーマだが、「呼び声の数は500回以下であり、こうした研究としては非常に少ないと言えます」と、氏は述べている。 「この研究のペアの多くは、話し手と受け手が1頭ずつで同じ組み合わせです。異なる話し手が同じ名前を使う一貫性が確認できない限り、受け手の『名前』を知ることは不可能です」と氏は言う。「そしてこの研究では、そこに一貫性はありません」 「名前が名前であるためには、2頭以上の話し手が使っている必要があります」と氏は言い、名前のように聞こえる音は、何か別のものとして説明がつく可能性があると指摘している。 たとえば、だれかがある特定の相手に「ハイハイハイ」と言い、また別の相手に「ヘイヘイヘイ」と言った場合、コンピュータアルゴリズムは、一方の名前は「ハイ」でもう一方は「ヘイ」であると示唆するだろうとヨベル氏は言う。「でも、そうではありません」
録音した呼びかけの声を聞かせてみた
研究者らはフィールド実験も行い、研究対象のゾウに向けて複数の録音データを聞かせている。音声データの中には、もともとそのゾウに向けられたものと、同じ個体が別のゾウに向けたものとが含まれていた。 これに対するゾウの反応は劇的だった。ゾウたちが自分の「名前」を確かに認識し、それに応答することが示されたと、パルド氏は言う。 たとえば、ドナテラが彼女に向けられた呼びかけを聞いた際、彼女は「8回鳴き声を上げ、スピーカーに近づき、その背後を探した」という。 一方、いとこのロスコに呼びかけたときの再生音声を聞いたときには、ドナテラはほとんど反応せず、1度だけ鳴き、スピーカーには近づかなかった。