Bリーグ ディズニーランドを超えるエンタメを!新アリーナで千葉Jが挑戦する最新と伝統の融合 千葉ジェッツの歌は「バスケ界の“六甲おろし”に」
24-25シーズンのBリーグが各地で開幕した。その中でも、NBAで6シーズンをプレーした日本代表の渡辺雄太(29)が新加入した千葉ジェッツが、5日の開幕戦でライバルの宇都宮ブレックスと対戦。新アリーナ「ららアリーナ東京ベイ」での公式戦初戦として大きな注目を集めた試合は、最新鋭の設備とファンになじみの演出が共存するものとなった。 千葉の開幕戦に取材申請したメディアは70社以上。その数を1つ取っても昨年W杯、そして今夏のパリ五輪から続くバスケ熱の高まりが分かる。約1万人の観客を集めた新アリーナの雰囲気も、それを象徴していた。 千葉の社長も務め、この試合を視察したBリーグの島田チェアマンも新アリーナに「デカいなと。1万人ぐらい入るアリーナは迫力がすごいなって」と感想を語り、成長した古巣に「感慨深いというか…ここまで大きくなって本当にただただ驚くばかり」と話した。 クラブの成長は街の景色も変えていく。「経済効果にも寄与している。それができることによって、マンションや商業施設がどんどん建設予定と聞いているし、(南船橋の)駅前周辺に、最後は船橋駅まで影響を与える動きが出始めているとも聞いている」とした。 音楽ライブも行われるアリーナは、まさにエンターテインメントの追求という目標をかなえる夢の場所だ。開幕節では試合前にロックバンド「サンボマスター」のライブが行われ、ハーフタイムにはBMXライダー・内野洋平がパフォーマンスで場内を盛り上げる。 アリーナ空間はすり鉢状型のボウルデザインを採用し、コートとスタンドの距離が近く一体感を生み出す。約423インチのセンタービジョン、最新の音響設備と多彩な演出が可能となった。 本場アメリカのNBAをほうふつとさせる雰囲気。ただ、これまでファンと培ってきた応援スタイルも維持されている。試合前には、これまでと変わらず「千葉ジェッツの歌」が流れ、ファンの大合唱が響き渡った。 千葉の三浦広報は「良いものは残しつつです。千葉ジェッツの歌も(歌そのものを)変えるとか、使う場所を変えるという案もあった。曲調も若干古いのではという声も。でも、野球で阪神の『六甲おろし』は今でも歌われている。バスケ界の六甲おろしを目指したい。それで残そうという話になった」と説明する。 その成否は、アリーナで合唱するファンの姿を見れば明らかだ。演出の仕方にも細やかな工夫がある。「試合前からハーフタイムまでは、お客さまに参加してもらって楽しんでもらう時間。試合後半は参加型のコンテンツは減らし、試合に没頭して楽しんでもらうように演出担当の方が考えてくれている」という。 三浦広報は「バスケへの注目度は上がってきているが、同時に油断をしてはダメだとも思う」と話す。千葉では選手への研修で、ネットでの検索ワードなどの数値をリサーチして示している。W杯や五輪を経て注目度は上がっているが「やはり、まだかな…と感じる部分もある」とした。 研修では野球やサッカーとの比較だけでなく、ディズニーランドや映画鑑賞といった娯楽についてのデータも提示した。「お客さまが土日にどこへ行くか。ディズニーへ行くか、映画に行くか。その中でバスケ観戦を選んでもらわないといけない。そこで選んでもらえるエンタメにしないといけないという話は選手にしている」と明かした。 高いハードルだ。ディズニーランドよりも楽しいと思わせるエンタメの追求。日常の選択肢にバスケが入るという文化としての確立。そのための最新鋭のアリーナと“千葉らしさ”の融合は、まだ試行錯誤の段階だ。ただ千葉の開幕節2試合は、その可能性の一端を示した。バスケ熱を本物にできるか-。千葉ジェッツが挑むコート外での取り組みにも要注目だ。(デイリースポーツ・中田康博)