綾瀬はるか主演、「こちらあみ子」で大注目の監督の2作目 詩集を映画化した“不思議”なロードムービーとは?
綾瀬はるかは「素晴らしい俳優であり、人」
綾瀬はるかを主演に迎え、「こちらあみ子」で鮮烈な印象を残した大沢一菜を再び起用。さらに伊佐山ひろ子、高良健吾、河井青葉、渡辺美佐子、市川実日子ら実力者が揃った。 「綾瀬さんに対しては、どこか孤高の人という印象を持っていました。独りでそこに立っていることができる、という感じ。そんな人はなかなかいない気がしたので、お願いしました」 「実際にご一緒してみると、僕の抽象的な説明も感覚的に理解してくれて、ものすごくやりやすかったです。本当に素晴らしい人、素晴らしい俳優だったと思います」 一方、そんな綾瀬を筆頭に、本作のキャストは誰もが感情を排したかのような発声と抑制的な演技をしており、何とも言えない味わいを醸し出している。 「演技を抑えてほしい、という言い方は綾瀬さんにはしていません。ただ、のり子は何も背負うものがなく、他者に自分のことを説明する必要がない。だから、『表現』はしなくて大丈夫だと思う、と話しました」 「映画をどういうトーンにするかを考えた時に、イメージにあったのは子供の頃に読んだ児童文学の挿絵の雰囲気。…伝わりますかね? ああいう昔の本の挿絵って、線が妙に無造作で、すごく無表情なんですよ。幼心にそれが不気味だったのですが、あの怖さを映画に取り入れてみようと考えました。その中心に『表現』をしない綾瀬さんがいるので、他の俳優さんたちも現場の空気を鋭敏に感じ取った結果、自然とああいうトーンになったんです。もちろん、ロケをした国道29号線のどこか霊的な雰囲気も作用したと思います」
映画にちりばめた「不思議」感じて
ローカルな国道を舞台にしたロードムービーでありながら、ある種のファンタジーでもある本作。冒頭で「よくわからない」と書いたが、それは決してネガティブな意味だけではなく、「わからない」故の心地良さ、あるいは言葉では言い表せない世界の美しさ、奥深さ、優しさの一端に触れるような感動と興奮が確かにある。生と死、現実と非現実が渾然一体となった本作から、綾瀬は「死ぬことを恐れる必要はない」というメッセージを受け取ったという。森井監督自身が込めた思いは。 「『不思議なものに触れたい』という思いがずっとあるんです。現実は無味乾燥で、不思議さも失われている気がするのですが、まだ『なくなった』とは思いたくない。この『ルート29』には、たくさんの不思議をちりばめてみました。言い換えると、それは『謎』、あるいは『わからなさ』に近いかもしれません。そんな不思議の中を突き進んでいく2人の物語。彼女たちが過ごした時間を皆さんと共有できれば嬉しいです」 「映画を見て、『わからない』という人もきっといると思います。でも、『わかるから良い/わからないからダメ』とか、そんな次元で作っていないという意識はあります。映画にとって、そして全ての芸術作品にとって、『わからないこと』って実はすごく大事。そうじゃないと、面白くもなんともないですから。この映画も『わからないけど面白かった』と感じてもらえたらと期待しています」 「ルート29」は11月8日(金)全国公開。 (まいどなニュース・黒川 裕生)
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