葉加瀬太郎さん顔面麻痺を公表 「ラムゼイ・ハント症候群」の症状・治療法を医師が解説
バイオリニストの葉加瀬太郎さん(56)が、自身の公式サイトにて「ラムゼイ・ハント症候群」と診断されたことを明かしました。顔の半分が動かなくなったことがきっかけで、病院で検査を受けたそうです。 【イラスト解説】キーンとした「耳鳴り」が続く4つの原因 ラムゼイ・ハント症候群は、脳疾患などほかの症状との判別が難しく、治療が遅れると後遺症で社会復帰に悩むケースもあります。そこで、ラムゼイ・ハント症候群の症状や特徴、治療方法、ほかの顔面麻痺との見分け方について医師の和佐野浩一郎先生に説明してもらいました。 なお、葉加瀬さんは「左半分以外は元気いっぱい」とも明かしており、翌7日には、コンサートツアーを無事開催しています。 ※この記事はMedical DOCにて《「ハント症候群」とは?症状・治療法についても解説【医師が監修】》と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
ラムゼイ・ハント症候群とは
編集部: ラムゼイ・ハント症候群とはどのような病気ですか? 和佐野先生: 顔面神経麻痺に加えて耳の痛み・水ぶくれ、難聴、めまいなどが突然起こる病気です。10万人に約5人が発症するといわれており、顔面神経麻痺では発症頻度が高いものです。 ラムゼイ・ハント症候群は、水痘帯状疱疹へルぺスウイルス(すいとうたいじょうほうしんヘルペスウイルス)が顔面神経で悪さをすることで発症します。 編集部: 原因はウイルス感染ということですが、うつるのでしょうか? 和佐野先生: 基本的にラムゼイ・ハント症候群は、子どもの頃に水痘に感染した際に身体の中に潜んでいる水痘帯状疱疹へルぺスウイルスが再活性化して起こるため、人に感染することはまずありません。しかし、患部の発疹に触接触ることでウイルス感染を起こす可能性はあります。 通常、ウイルスは免疫機能の働きによって顔面神経の神経節でおとなしくしています。しかし、疲れやストレスなどで免疫機能が低下するとウイルスの勢いが抑えられなくなり、顔面麻痺などさまざまな症状を発症します。 編集部: 症状について詳しく教えてください。 和佐野先生: ラムゼイ・ハント症候群の主な症状は、顔面神経麻痺による表情筋の運動障害です。片側の目や口をしっかりと閉じることができず、おでこにもしわを寄せることができなくなります。 ラムゼイ・ハント症候群では顔面神経だけでなく、周辺の脳神経の働きをも障害するため多種多様な症状が現れます。耳の周りに水ぶくれや強い痛みが起こる耳の帯状疱疹、難聴やめまいなども発症するのが特徴です。 これら症状のあらわれ方はさまざまで、数日から1~2週間かけて徐々に症状が出てくることもありますが、すべての症状がそろうのは半数程度です。治りにくい顔面麻痺では後遺症が残るケースも多くあります。 編集部: 何科を受診すればいいのでしょうか? 和佐野先生: 耳鼻科です。耳痛や耳たぶの水ぶくれなど耳の症状が早く出れば、早期に耳鼻科で適切な治療を受けられるため症状を軽くできます。しかし、めまいや顔面神経麻痺が起こると脳外科や内科を受診する人がいて、治療が遅れるケースもあります。 脳疾患による顔面神経麻痺との簡単な見分け方は、おでこのしわです。脳に異常がある場合には額の麻痺が起こらないため、顔面麻痺でもおでこにしわをつくれることがあります。 また、ラムゼイ・ハント症候群と似ていますが、単純へルぺスウイルスによって発症するベル麻痺の顔面麻痺では、合併症はなく顔面の麻痺だけです。