『シュリ』韓国スパイアクションの金字塔、今なお鮮烈な「分断」の問題
スパイアクションの金字塔
物語の舞台は1998年9月のソウル。韓国情報部室長のユ・ジュンウォン(ハン・ソッキュ)は、数年間にわたり発生している要人暗殺事件を解決するため、相棒のイ・ジャンギル(ソン・ガンホ)と捜査を進めていた。犯人と目されるのは、北朝鮮の女性工作員イ・バンヒ。ところが、懸命の捜査にもかかわらずバンヒの行方はわからないままだ。 一方、北朝鮮の工作員であるパク・ムヨン(チェ・ミンシク)らは、「シュリ作戦」と呼ばれる極秘任務を達成すべく、ひそかに韓国に侵入していた。ムヨンらの狙いは、韓国の国防科学研究所が開発した新型液体爆弾 CTX。バンヒを追うジュンウォンとジャンギルは研究所に駆けつけるが、CTXの重要人物だった研究員は殺害され、輸送中だった CTX はムヨンらに強奪されてしまう。 なぜ情報部の動きが察知されているのか、なぜ犯人は捜査の先をゆくことができたのか――。ジュンウォンとジャンギルは、情報をリークしているスパイが内部にいるのではないかという疑念を抱きはじめる。相棒さえも信頼できない状況のなか、身の危険を感じたジュンウォンは、職業を隠しながら交際している婚約者のイ・ミョンホン(キム・ユンジン)をホテルに匿うことにした。 折しもソウルでは、2002 年の日韓ワールドカップに向けて南北朝鮮の統一チームが結成されること、その選手選抜を兼ねた南北交流試合が開催されることが決定したばかり。南北の和解ムードが高まるなか、ムヨンたちはCTXを街中に設置し、人々を恐怖のどん底に突き落とそうとしていた。解決の糸口をつかめずにいる情報部に、ムヨンらは容赦ない犯行予告を突きつける。 『シュリ』の特筆すべき点は、製作から25年を経てもほとんど古さを感じさせないスリリングさにある。ジャンルを掛け合わせつつ、スピード感あふれる演出と編集で物語を転がしていくストーリーテリングはハリウッド映画さながら。ジュンウォンらがソウル市内を駆け回る市街地でのロケ撮影や、高速道路で激しい銃撃戦や爆発が起こるアクションのスケールは、いま観ても「よくぞ実現できた」と思えるほどの鮮やかさ。室内での格闘や銃撃戦には香港アクション映画の影響もあり、娯楽映画としての完成度に改めて唸らされる。