『シュリ』韓国スパイアクションの金字塔、今なお鮮烈な「分断」の問題
『シュリ』あらすじ
要人暗殺事件を捜査中の韓国情報部員、ユ・ジュンウォンとイ・ジャンギル。犯人と目される北朝鮮の女性工作員を追跡するふたりは、強力な破壊力を持つ液体爆弾を用いてのテロの脅威を知る。ターゲットは南北両首脳―。
韓国映画の歴史を変えたターニング・ポイント
のちに「韓流」と呼ばれる、世界に訴求しうる韓国エンターテイメントの先駆けとなった映画『シュリ』(99)が製作25周年を迎えた。ハン・ソッキュ主演、カン・ジェギュ監督による、スパイ・サスペンスとアクション、ラブストーリーを融合させた一大エンターテインメントだ。 この映画が「韓国映画の未来を切り開いた」といわれることには大きな理由がある。1999 年 2 月 13 日に韓国で公開されるや、韓国では観客動員数621万人を記録し、レオナルド・ディカプリオ&ケイト・ウィンスレット主演『タイタニック』(97)を超える大ヒット。翌2000年には日本公開され、当時の韓国映画としては異例の興行収入18億円を記録している。 こうした結果により、「韓国映画は世界で戦える」というイメージが定着したことから、国内の映画投資と世界進出戦略が推し進められ、韓国映画は世界における現在のポジションを確立するに至った。20年後の2019年には、ポン・ジュノ監督『パラサイト 半地下の家族』が米国アカデミー賞で作品賞・国際長編映画賞など4部門に輝いたが、こうした栄光も『シュリ』なくしてはありえなかったかもしれないのだ。 当時、韓国映画史上最高の製作費が投じられた本作には、大手テクノロジー企業のサムスンが出資(劇中にも社名ロゴが登場する)。ところが、のちにサムスンが映画事業から撤退したことで世界での上映権などが宙に浮き、『シュリ』は長らく一般上映・配信などが叶わなくなっていた。 製作25周年のアニバーサリー・イヤーに先がけて、ようやく版権の問題が解決してリマスター作業がおこなわれ、2023年10月の東京国際映画祭でデジタル・リマスター版の日本初上映が実現。2024年、一般向けの劇場公開と配信が叶ったことで、韓国映画のターニング・ポイントである本作が再び解き放たれることとなった。