「今後のコメ作り見通し立たず…」 奥能登の作付面積4割減、岐路に立つ農業関係者
また、「激甚災害」の指定を受けている能登半島地震では、国による高い補助率での復旧工事が可能だが、多くが査定段階に留まるという。
査定前の応急工事はあくまでも仮復旧。根本的な問題解決とはならず、深刻な状況は打開できていない。珠洲市の農業関係者は「今後も農業を続けられる環境基盤が整わないことには不安は消えない」と明かし、長期的な支援の必要性を強調した。
■適切な技術導入や財政支援を 近畿大農学部・増田忠義准教授
能登半島地震の影響で離農が加速すれば、農業生産を保全できるのかと同時に、地域社会の持続的な安定を保てるかが大きな懸念事項となる。
観光・外食産業でコメをはじめとした地元産の食材を国内外客へアピールしているケースがある。お酒やみそ、しょうゆといった伝統食品などの原材料となっているケースもある。畜産・漁業も含めた地域の農業生産が維持されなければ、幅広い産業のネットワークが打撃を受ける恐れがある。
農地の復活・再整備は、だれが所有し経営を担うのか、分かっているところから優先して進めるべきだ。
離農した農地も、新たに経営へ参画し生産を続ける人が見つかったところから復活させたほうがいい。奥能登ほど高齢化が進んでおり、生産条件も厳しい。集落ごとの状況を踏まえつつ、全国的な担い手募集キャンペーンも必要ではないか。
一方、地盤の変化などで能登地方の特色である水田稲作ができなくなれば、地域は危機的状況に陥る。だが、畑作に転換し、ほかの作物をつくるといった対応策もある。行政は既存の制度も利用しながら、適切な技術導入や財政支援を進めるべきだ。