「今後のコメ作り見通し立たず…」 奥能登の作付面積4割減、岐路に立つ農業関係者
周辺では地震による農具や機械の損傷などで離農の動きも加速する。「地震がなければあと10年は続けたかった」と話す宮下満さん(63)もその1人。地震により農具を入れていた納屋が大きく傾き、作業などもできなくなった。自宅も半壊し、現在は仮設住宅の入居待ち。「次に大きな揺れがあればいつ納屋が倒壊してもおかしくない。傾いた納屋を見て農業を断念することを決めた」とため息をつく。
県によると、奥能登4市町(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)の6年産米の作付け見込み面積は昨年の6割程度。自宅が損壊し、仮設住宅で暮らす農業従事者も少なくなく、作付け自体を見送った地区もあるという。
状況は依然として厳しく、岐路に立つ奥能登のコメ作り。すえひろの末政博司社長(65)は「一度、耕作放棄地となれば、再び田んぼにすることは難しい。なんとか踏みとどまり、今後もこの土地でコメ作りを続けていきたい」と話している。
■農業被害なお7千件超
石川県内の農業関連の被害件数は6月18日時点で7千件以上に上る。農業は1年を通した長期的な計画が必要となる。復旧の目途が立たなければ離農の動きが加速する懸念もあり、迅速な支援が求められる。
県によると、深刻な被害を受けた奥能登地域(珠洲市、輪島市、穴水町、能登町)では、のり面の崩壊や田んぼの亀裂などの農地被害は4市町で1041件。農道の陥没や隆起は1030件、水路被害は1357件となっている。
毎年のように大規模災害が発生する中、国はこれまでも地方農業の早期復旧を支援する取り組みを展開。過去の災害では被災を機に作物転換や施設の強靭(きょうじん)化などに取り組む産地に対し、簡易な農業用ハウスや補強に必要な資材導入などに要する経費の助成なども行ってきた。
能登半島地震では、国は1月、被災者の生活と生業の再建を支援する政策パッケージを策定。農業分野では、「地域農業の将来ビジョンを見据えた復興方針の検討」「農地・農業用施設の復旧と一体的に行う水管理の効率化」「観光とも連携した持続可能な里山づくり」などを進める方針だ。