子供“無料招待”から見る日本サッカー現在地 ドイツでも類似例…未来に向けたクラブの努力【現地発コラム】
【日本×海外「サッカー文化比較論」】子供をスタジアムに無料招待する取り組み
日本と海外を比べると、文化的な側面からさまざまな学びや発見を得られる。「FOOTBALL ZONE」ではサッカーを通して見える価値観や制度、仕組み、文化や風習などの違いにフォーカスした「サッカー文化比較論」を展開。今回のテーマは、Jリーグで話題になった子供の無料招待が海外でも実施されているのかについて。ドイツ・ブンデスリーガを参考に、日本との類似点や“サッカー大国”独自の事情について探る。 【画像】「ひどい臭いだった」 EURO観戦のファンに当てがわれた“廃墟の地下牢”のような宿泊場所 ◇ ◇ ◇ 6月12日、静岡県内を本拠とするジュビロ磐田(J1)、清水エスパルス(J2)、藤枝MYFC(J2)、アスルクラロ沼津(J3)の計4クラブの各社長が静岡県教育委員会を訪れ、県内の小学生を各クラブのホームゲームに無料招待することを報告した。4クラブは「子供たちの夢や憧れを育み、Jリーグのチームや選手を身近に感じてほしい」という思いから、県民共済と共同で県内の小学生とその保護者を各ホームゲームに無料で招待する取り組みを3年前から行っており、今シーズンもその一環として本施策を実施する。 ほかにも例を挙げると、鹿島アントラーズは、席種限定でホームゲーム全試合を対象に全国の小学生向けチケットを無料に。また、SC相模原はホームタウンに在住もしくは在学する小学生を対象に「こどもフリーパス」を発行してホームゲームへの無料招待を行っている。 独自の取り組みを行っているのはクラブだけではない。リーグを統括するJリーグも春休みや夏休みの時期に合わせてJリーグ各試合に観戦者を無料招待しており、世代を問わずサッカーという競技に関心を持ってもらうための施策を次々に打ち出している。 このような無料観戦施策はサッカー大国であるドイツでも行われている。ただし、その名目や目的は日本とは多少異なるように感じる。各種事例から、傾向と狙いを考察してみよう。 ブンデスリーガ各クラブの多くが行っている施策の1つが、「Schosskarten」というチケットの販売だ。「Schoss」は膝、「Karten」はカードもしくはチケットという意味で、つまり大人の膝に子供を乗せて観戦する場合は子供の入場料が無料になるというもの。大半の場合、子供用の座席が与えられるわけではなく、対象年齢なども各クラブによって異なる。それでも、大人料金のチケット1枚分で親御さんや親戚などに同伴した子供が試合観戦できる仕組みとして好意的に捉えられている。 ブンデスリーガの試合へ行くと家族連れの姿が数多く見られる。例えばご両親と子供2人の4人家族ならばお父さんとお母さんのチケット2枚分で家族全員が観戦できる。ブンデスリーガのゲームはヨーロッパ各国の中でも比較的安全と評価されているため(それでもお酒を飲んで大騒ぎしている輩も散見されるが……)、男女、年齢の差異無く多くの年代がゲーム観戦に訪れてサッカーという競技に触れ合える環境が整えられている。