コロナ禍でも年4千人以上が急性アルコール中毒で搬送、危険な飲酒から若者の命を守るには 「意識がない息子がどうすればよかったのか」近畿大一気飲み死亡事故遺族の慟哭
賠償額は、飲み会に参加して一緒に飲酒した10人に計約4220万円。介抱に当たった学生6人も賠償責任を負うとして、うち計約2530万円の支払いを命じた。 一方で判決は、参加者が飲酒を重ねて求めたり、飲酒を断ることに何らかのペナルティーを設けたりした事情はなく、「違法な飲酒の強要があったとは認められない」と結論づけた。勇斗さんにも「自ら多量な飲酒をした過失があった」とした。 「意識がない状態にあった息子がどうすればよかったのか。この判断を受け入れることができません。関与した全ての学生が救急車を呼ぶことができたはずで『自分は知らなかった』という言い分は許されないと思います」。判決後に両親が寄せたコメントにはやりきれなさがにじんだ。 学生らの一部は判決を不服として控訴し、訴訟は今も大阪高裁で続いている。 ▽コロナ禍でも絶えなかった急性アルコール中毒 東京消防庁によると、東京都内の急性アルコール中毒による搬送者数は、新型コロナ禍前は毎年1万5千人前後で推移しており、2019年には記録が残る1983年以来最多の1万8212人を記録した。だが、2020年に新型コロナが流行しはじめ、国や自治体は外出自粛要請を伴う緊急事態宣言や酒類を提供する飲食店の営業時間短縮などの措置を発動。大勢での飲酒の機会は減り、同年の搬送者は1万1291人まで減少した。感染拡大の影響が続いた2021年は8951人となり、1996年以来初めて1万人を下回った。
一方、年代別の搬送者の内分けを見るとコロナ禍以降、いずれの年も20代が最多で、2020年は5263人、2021年は4217人が搬送されるなど、全体の約半数を占める結果となっている。 ▽強要されそうになったら…とにかくその場を立ち去る 危険な飲酒の撲滅を訴えるNPO法人「アルコール薬物問題全国市民協会(ASK)」の今成知美代表は「社会に出て間もない20代は、仲間内のルールを守る同調圧力に敏感だ。飲酒を強要されても、断ることでつまはじきにされるのを恐れて従ってしまう」と指摘する。コロナ禍では友人同士など狭い集団で飲む機会が増え、より断りづらい空気もあるという。行動制限が緩和され、コロナ前のような大勢の飲み会での飲酒強要も再び起きるだろうと警戒する。 ではもし、飲酒を無理強いされる場面に出くわしてしまったらどうしたらよいのだろうか。今成代表は「とにかくその場を立ち去る、命を守る行動をとってほしい。近大のケースでは飲み会の参加者に刑事罰が科され、民事訴訟でも高額な賠償金の支払いが命じられた。司法が厳しい判断をしている事実を突きつけるのも抑止力の一つになる」と訴えた。