【千葉魂】選手の心と向き合いながら 吉井監督、3年目へ余念なく 千葉ロッテ(第450回)
マリーンズを率いて2年目がまもなく終わろうとしている。12月14日。吉井理人監督の姿は宮崎にあった。宮崎大学で行われていた日本臨床心理身体運動学会(主催=日本臨床心理身体運動学会)に出席するためだ。 吉井監督は訪問の目的について「専門分野の学問として臨床心理学、臨床スポーツ心理学などに興味があった。心理的要素はスポーツにおいてコーチングの部分でたくさん交わることがある。選手たちのパフォーマンスにも大きく影響すると思っている。この機会にアスリートのさまざまな心理やそれに対するアプローチを勉強したいと思った」と語った。 ここではスポーツに関わる事象だけではなく、いろいろなことに興味を持って動いた。人間が寝ている時に見る夢についての発表会場にも顔を出して話を聞き入った。3年目のシーズンに向けて自己をアップデートするために余念がなかった。実りの多い時間となった。 指導者になって肝に銘じていることがある。それは選手の考えをしっかりと聞くことだ。現役時代、メジャーに挑戦するためアメリカに渡った時、現地のコーチに言われた言葉が忘れられない。「アナタのことはアナタが一番わかっている。だからアナタについて、まずはアナタの話を聞かせてくれ」。日本では言われたことがなかったアプローチに感激した。だから指導者となるに当たって聞く能力と話す能力をなによりも意識し勉強した。 「まだまだ、もっともっと選手たちの本音を聞き出したい。指導者として話をする技術も磨いて、相手が話をしてくれるようにしたい」と言う。 昨年末に行われたメディア向けの年間総括会見では一年を「50点」と回答した。そして今年も総括会見で「同じくらいかな」と振り返った。夏場の失速を課題として迎えた一年だったが、今年も同じ壁にぶつかった。指揮官として責任を痛感した。 「勝敗の責任は全部、自分のせいだと思っている」。シーズンの負けのすべてを一身に受けてきた。そんな監督業を「孤独に感じることはある」と言う。今年のシーズンオフ、プロサッカーの指導者と会う機会があり、共感したことがあった。「負けるとみどりがオレを呼んでいるといって、無性に木の下とかに行きたくなるらしい。気持ちは分かる。自分はウエートルームかなあ。重りが呼んでいるって、一人で重りを感じながら発散する」と笑った。 オフは映像、データを見直し、書物を読み、人と会うことで話を聞き、機会があれば場所はどこであれ学会に足を運んだ。そこで得たものをメモにしてまた新たなシーズンに挑もうとしている。 「選手の発する言葉の意味とよく向き合い指揮を執っていきたい」と吉井監督は言った。それこそが今のマリーンズが大切にしている形だ。まもなく一年が終わる。そして新しい一年が幕を開ける。人と人のつながりと想いを大事にしながら頂点を目指す戦いが始まる。 (千葉ロッテマリーンズ広報・梶原紀章)