観光税はオーバーツーリズム対策になるのか? 導入した欧州人気観光地の「無慈悲な現実」
アムステルダム、最も高い観光税でも観光客は減っていない
オランダの首都アムステルダムは、ヨーロッパの都市のなかで最も高い観光税を導入している。ホテル、キャンプ場、サービス付きアパートメントの宿泊客には、宿泊費の12.5%が課税される。例えば基本料金が1泊200ユーロ(約3万2000円)の4つ星ホテルに泊まったとすると、25ユーロ(約4000円)の観光税が上乗せされる。 アムステルダムの副市長であるヘスター・バン・ビューレン氏は、2024年に2億4400万ユーロ(約390億円)の観光税を見込んでいると話す。この収入は、観光による影響緩和と町の改善に使われる。 2018年に初めて観光税が導入されたとき、税率は5%だった。それが現在の税率にまで引き上げられても、まだ観光客は町にやってくる。2023年には、約900万人の宿泊客がアムステルダムを訪れた。 「当初は観光客を減らすことが目的だったのですが」と話すのは、オランダ、ティルブルフ大学教授のグレッグ・リチャーズ氏だ。「けれどもその後、徴税の理由が、オーバーツーリズムの抑制から資金集めに切り替わったのです」 アムステルダムが委託した調査報告によると、税金の額を3倍に増やさない限り観光客は減らないだろうという。この結果が方針転換につながったのだろうと、リチャーズ氏は考えている。別の、広範囲な学術研究でもやはり、観光税がオーバーツーリズム対策になるという証拠は示されていない。 現在、アムステルダムが徴収した税金の使途は明確になっていない。「観光税は一般予算と一緒にされてしまっているため、税金が目立った効果を上げているのか、それとも単に自治体予算の穴埋めに使われているのかは不明です」と、リチャーズ氏は指摘する。 さらに、こうも付け加えた。「観光税が引き上げられれば、アムステルダムの外にあるホテルに宿泊して、町のなかには日帰り観光に行くという人が増えるでしょう。そうなれば、アムステルダムにとっては観光客による負担だけが残って、税収が減るということになりかねません。同様の問題が起こっているベネチアが、日帰り観光客への税金を導入した理由の一つはそこにあります」