【現地観戦】「中国代表は警察に通報すべき」「10元で7ゴール見られてお得」日本に大敗した中国ファンの本音は...
「三笘は...、久保は...」元サッカーメディアのAさんが漏らした言葉
試合場で知り合ったAさんもその一人だ。「中国代表は根性ゼロや」「崩壊した」と嘆きが止まらない。 彼は結婚したばかりで、新婚旅行を兼ねて試合を見に来たという。中国で代表戦を見に行くと、良い席は1人数万円になるという。日本に来れば、同じぐらいの金額で試合も見られて旅行も楽しめるとやってきた。 もっとも、奥さんはサッカーにはまったく関心がなさそうだった。漢服(中国の伝統衣装)マニアで、京都、奈良の古都で写真を撮るのが楽しみだという。試合会場にも仙女のような衣装でやってきていた。 サッカーに興味ゼロの奥さんを一切気にすることなく、Aさんは「三笘はやばい選手だ。あのドリブルは...(以下略)。久保はスペインで活躍している選手で抜群にテクニックが...(以下略)。日本代表相手に1点入れられれば御の字だが、日本を完封するのは至難の業。では中国代表はどう戦うべきか、まず...(以下略)」と熱くサッカートーク。この新婚旅行中にケンカが起きることは必至だろう。 さて、このAさんはメディア関係者で、かつてはサッカーメディアでも働いていたという。その彼がぽろっと話したのが冒頭の言葉、「自由がないと、サッカーは強くならないんだろうね」だ。 習近平総書記のサッカー好きは有名な話で、「中国代表がワールドカップに出場すること、中国がワールドカップを開催すること、そして、いつの日かワールドカップで優勝すること、これが私の望みだ」とも発言したこともある。 というわけで、総書記の夢をかなえるべく、国をあげてのサッカー強化がはじまったのだが、お手本となったのが日本だった。
習近平総書記「サッカー改革発展総体ソリューション」の結末
五輪のメダル数だけ見れば、中国は立派なスポーツ大国。ソ連や東ドイツで確立した、有望な若者を幼い頃から徹底的に鍛え上げる社会主義流強化策で成功を納めてきた。 だが、サッカーやバスケットボールなど世界に愛好家が多い人気球技の成績はいまいち。こうした種目で強くなるためには競技人口そのものを増やす必要があると提唱された。そこで模範とされたのが日本の部活動だ。 かくして2015年に「中国サッカー改革発展総体ソリューション」なる法律が公布され、「サッカー特色学校」という制度が導入されることとなった。この指定を受けた学校は、日本の部活動よろしく学校でサッカーに取り組むという内容だ。 2025年までに5万校が指定されるという壮大な計画である。総書記の言うことは絶対、この習近平パワーで一気に中国代表は強化されると喜んだ中国人サッカーファンも少なくなかった。 が、あれから9年、中国代表は強化されるどころか弱体化する一方である。かつては禁じ手としていた外国籍から中国籍に国籍を変えた帰化選手も解禁したのだが、まったく結果は伴っていない。 結局は外見だけマネしてもダメ、自由がないという国の根幹がサッカーに反映されているのではないかとAさんは話していた。 この見解が正しいのか間違っているのかはともかくとして、「総書記パワーで中国サッカー強化」、このプランはほぼ失敗したのではないか。前述のサッカー特色学校も、今年5月発表で5734校にとどまっている。2015年の制度導入初期からほぼ増えていない。つまり、「2025年までに5万校」の目標達成は困難だろう。 経済も外交もうまくいかず、趣味のサッカーまでも失敗。習近平総書記も大変だ。 高口康太(ジャーナリスト)